その頃の紅の爪の面々
紅の爪達のお話です。
バルガス一行『紅の爪』の面々は、モンスター討伐依頼の為にダンジョンへと向っていた。
ダンジョンに住むモンスターは基本的にはダンジョンの外へは出ない。
だが稀にダンジョンの外へ出てしまうモンスターも居る。
既にダンジョンの外で生活圏を手に入れてしまったモンスターも多数居る。
そういったモンスターは浅い層、つまり弱いモンスターが殆どなのだが、それでも周囲の自然や人々に何かしらの害が出てしまう。
「ダンジョンのモンスターはどこからともなく現れ、何故か一定数以上は増えない」そういった説もあるが、実際に外に出てしまい、更には外の世界で住み着いて繁殖までしてしまうモンスターがいる以上はその可能性を減らす為、数は減らしておきたい。
今回のクエストもそういったものだ。
が、一向にダンジョンが見えてこない。
予定では既にダンジョンにへ到着しているハズだった。
「ねぇ……まだ着かないんですか?」
1番体力の無い魔法使いのリリタが音をあげはじめたが、バルガスはそれを許さなかった。
「何情けない事言ってんだよ、これより遠い場所に行った事あんだろ?」
「まぁ、確かにそうだけど……」
「おい、ルタール!お前弓使いなら斥候の一つくらいできねぇのか!?」
「俺の仕事は弓を射る事、そういうのは専門外だ」
「チッ……!ラルミア!」
「こんな状況で一人離れろって?出来るわけないでしょ」
「リリタは?」
「私も、できません」
「……(クソが)」
何だか今回の移動は疲れる。
リリタはそう思ってならなかった。
実際のところ、リリタだけでは無く他の面々も似たような事を考えていた。
「足手まといが居なくなってやりやすくなったハズだ、何かがおかしい」と。
彼等は確かに地図を読む事ができた。
だが、地図にありとあらゆる地形の全てが書かれているわけでは無い。
大雑把と言っても差し支えない。
だからこそ、様々な情報を得る必要がある。
例えば、同じ地域を示した別々の地図を見比べてみる。
例えば、ギルドの依頼や受付嬢からの情報で経路周辺のモンスターの状況を読み解く。
例えば、現地の状況を見て情報を修整する。
等々、より効率的に移動する為にはそういった事が求められる。
そういった事はクルトが担当していた。
食料も重要だ。
荷物を軽くする為に持ち歩く食料は最低限に、不足分は現地で調達するのが基本となる。
現地での食料の調達もクルトが行っていた。
だが『紅の爪』にもうクルトは居ない。
その辺りを理解出来ていない『紅の爪』の面々がどうなるのかと言えば……
何だか分からないが、道が険しい。
何だか分からないが、よくモンスターに遭う。
何だか分からないが、食料の消費が激しい。
特に食料が致命的だった。
「迂回を促したり、立ち止まって周囲を調べ始めるクルトが居なくなり、早く目的地に着ける」と考えた為、食料を以前より少なめに見積もっていたのだ。
更に1日経過した。
まだダンジョンに到達していないのに、帰りの分の食料を消費し始めている。
仮にダンジョンにたどり着けたとしても、確実に食料が足りなくなる。
「クソッ!クソッ!このままいけば1等級だって夢じゃねぇのに……!」
ついに『紅の爪』はついにクエストを破棄する事となった。
「大まかな話の流れ」のネタはまだ尽きていない(多分)ので、何とか面白おかしく書けるように頭からひねり出します。