カマイタチ2
お待たせしました。
かまいたち。
アズマの地に伝わる妖怪。
野原で遊ぶ子供が何も無いところで転び、いつの間にか身に覚えのない傷が足にあり、その傷は既に血が止まっていたという。
それらはカマイタチの仕業だとされていた。
カマイタチは風のように素早い三兄弟のイタチだとされており、長男が転ばせ、次男が斬り、三男が傷に薬を塗っていたと言われている。
カネカズ、ギンジ、ミドウの三兄弟はイタチの獣人という事もあったが、キンイチが守りや崩しを行い、ギンジが斬り、ミドウが癒しの力で支えるという連携が「カマイタチ」と呼ばれる所以だった。
「あぁ!クソッ!クソッ!痛ェ!」
「やられたな、俺達を置いて先にいくからだ、ミドウ」
「はいはい、小兄ちゃん、まず針を抜くからね、我慢してよ?」
「がぁぁッ!畜生!痛ェ!痛ェ!畜生!」
「我慢しろ」
「我慢してね」
ミドウがギンジに刺さっている針を遠慮なく次々と抜いていく中、カネカズはミミアとメアを常に警戒していた。
全ての針を抜き、ミドウがギンジに手をかざすと、瞬く間にギンジの傷が癒えていく。
ギンジは傷が癒えた途端に立ち上がり、吠えた。
「あ゛あ゛ッ!クソが!殺す!徹底的に弄んで殺さなきゃ気が済まねェ!」
牙をむき出しにして怒りの感情をミミアとメアに向ける。
「好きなだけ弄んで良いが、とりあえず落ち着け」
「……あぁ、そうだな、すまねェ」
「弄ぶ時は僕も協力するから、その時は思いっきりやろうよ」
「あぁ、頼むぜ」
まさかギンジ以外にも敵が居たとは、想定していなかった。
まだまだだなと意見を合わせることも無く、2人は互いにそう反省した。
「ぐッ……」
「くッ……」
自分たちに対しておぞましい会話がなされている中、弾き飛ばされたミミアとメアが立ち上がる。
全身に痛みがあるが、無視できるレベルなのが幸いだった。
息を整え、構える。
「よし、行くぞ」
「おう!」
「はーい」
「カマイタチ」が彼女達へと迫る。
「氷よ」
「風よ」
ミミアから放たれた氷が、メアの放つ風に押され、回転しながらカネカズへと飛んでいく。
カネカズはそれを交差した腕で受け止める。
普通の人間なら骨の1本くらい折れても不思議ではない攻撃も、カネカズにとっては少し肉を抉る程度だった。
その傷もミドウが手をかざすだけで無かったことになる。
故に彼らは止まらない。
「土よ」
「氷よ」
カネカズの進路上に地面から格子状に土が伸び、その表面を氷が覆い、補強する。
更に、その氷は表面に無数の針を作り出す。
並の神経なら、この壁を真正面から受けるような事はしない。
「ぬんッ!」
しかし、カネカズは気合いの声と共に踏み込み、体当たりの一撃で粉砕する。
無数の針によってできていたであろう細かな傷も、壁を通り抜けた時には既に無くなっていた。
これ以上の妨害は不可能と判断したミミアとメアは左右へそれぞれ分かれて跳ぶ。
「右をやれ」
「あいよ」
合図と共に、カネカズとギンジが二手に別れた。
カネカズはミミアへ、ギンジはメアへと走っていく。
ギンジは元より、カネカズもその図体に似合わず、素早い。
カネカズの左拳が振り払うような動きでミミアの上半身へと迫る。
素早く身をかがめ、ミミアはそれを回避する。
ブオッという鈍い風を切る音が頭上をかすめた。
間を置かずの右拳。
――間に合わない。
「……ッ」
覚悟を決め、受けの体制を取る。
ドスン。
「あ……ぐ……ッ」
まるで丸太で叩かれたかのような衝撃。
拳を受け止めた左腕がミシミシと嫌な音をたててる。
カネカズがそのまま拳を振り抜き、ミミア体がぐるりと回転し、地面へ叩きつけられ、跳ねた。
「ミミアッ!」
「よそ見してていいのかぁ!?」
ギンジの斬撃を、メアは紙一重でかわしていく。
「さぁ、どうするよォ!さっきまでのショボい魔法は使わねぇのかァ?」
「……ッ」
ミミアとメアが使う魔法は種類こそそれなりにあるものの、それ程強力なものでは無い。
2人の魔法を組み合わせるには、互いがある程度近くにいなければならなかった。
今の距離では不可能だ。
彼らを避ける為に左右へ別れたことが仇となってしまった。
数々の斬撃をかいくぐりながら投げる針は全て弾き落とされる。
「はッ、1人だとこんなもんかよ!」
ギンジが更に間合いを詰める。
「ほらよ」
距離を取ろうと踏み込んだメアの足を、ギンジ
が蹴り払う。
――ガッ!
グラリと地面へ傾くメアのこめかみにギンジの鎌の柄が叩き込まれた。
「あッ……がッ……」
「メアッ!」
地に伏せるミミアが叫ぶ中、メアはそのまま勢い良く地面へ倒れ込む。
意識を刈り取られる程ではなかったが、思考が歪む。
ギンジは左手の鎌を地面に置き、意識が朦朧とするメアの両手首を掴み、軽々と持ち上げる。
大柄なカネカズに比べれば小さなギンジだが、メアを宙釣りにするには十分だった。
「お前等に針を刺された時は痛かったんだぜ?」
「……ふッ!」
メアは宙釣りにされたままギンジへ蹴りを放った。
「だから遅えって」
ギンジはその蹴りを事も無く防ぎ、メアの腹を殴った。
殴る。
殴る。
殴る。
「ごッ……おッ……うッ……」
メアは腹部を殴られるたびに吐き気がこみ上げ、ついには嘔吐してしまった。
吐瀉物はメアのメイド服をつたい、地面へと落ちていく。
「うわッ、コイツ吐きやがった!」
ギンジはメアを宙釣りにしたまま、吐瀉物を避ける為に大げさな足踏みをしながら後退する。
「ゲボッ……ゲボッ……」
「あ〜あ〜あ〜、ゲロで自分の服を汚しやがって……」
ギンジは呆れながらメアの襟に鎌の刃を当てた。
「汚ぇ服着てても気持ち悪ぃだろ?脱がしてやるよ」
そう言ってメアの身体を器用に沿って鎌を下ろしていき、音も無くメイド服が裂けていく。
正面を裂き、次は袖を裂く。
パサリとメイド服が落ち、メアの下着姿が顕になる。
「ぐッ……」
メアの顔が羞恥に染まる。
いくら相手が人間ではないとは言え、他人に下着を晒すのは耐え難かった。
「人間ってのは体に毛ねぇのが気持ち悪ぃんだが……宣言通り弄んでやるよ」
鎌を手放したギンジの右手がメアの下腹部へと伸びていく。
ここまで書いておいて難ですが、メアをどうしようかな……。
生娘を維持するかどうか的な意味で。




