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神剣は気ままに暮らしたい(仮称)  作者: 一二三 四五六
間の話・アレイヤ姉弟の旅行編
69/72

襲撃

おまたせしました。

今回は長めです。

ヨーコは日中と変わらないにこやかな顔を2人に向ける。


「あらまぁ、お若いのにその様な事を……緊急事態とはいえ、お邪魔でしたでしょうか?」

「え!?あ!いえ!僕とクレイさんはまだ……」

「あぁ、ごめん」


ルニスから離れ、壁の穴の方を見る。

ルニスが妙にションボリしているが、今は他に優先すべき事があるので、放っておくことにした。


「さっきの鎧の人、あの攻撃で……」

「まぁ、ピンピンしてるでしょうね」


そう言ってヨーコは穴の方へと歩き、その後ろをクレイは剣を呼び出しついていく。

鎧男は壁の穴の外、かなり離れたところでうつ伏せで倒れていた。

その手にはしっかりと剣が握られていた。


『ぐ……ぬぅ……』


鎧男が両手を地面につき、起き上がる。

特にふらつく事もなく「ちょっと躓いて転んだ」程度の様だ。

ぬるりとルーム振り返り、クレイ達を見る。


『見つけた』


そう言って鎧男が構える。


「……知り合いですか?」

「そうねぇ……迷惑な元隣人ってところでしょうかね?」

「何か凄い音がしたけど!?あの穴は何なの!?」


アレイヤが勢い良く壁の穴から外へと飛び出してきた。

その手には剣が握られており、その後ろにはミミアとメアの姿もある。

壁の穴から室内を見ると、ルニスのそばにはモニカや人形の様な従業員達も居た。


「侵入者です」

「何よアイツ、変な鎧着てるけど」


夜の暗がりのせいか、離れた位置にいる鎧男の中身が無い事にアレイヤ達は気付いていない。

アレイヤは敵と判断し、剣を構えた。


『帰ってきてもらおうか』


鎧男の言葉に、ヨーコは目を細める。


「後から現れて"ここは我々の物だ"と言うから譲って差し上げたというのに、今度は戻って来いだなんで……随分と自由な方々だこと……」

『来るのか……来ないのか……』

「勿論、お断りさせて頂きます。あなた達、野蛮ですもの」

『ならば……力づくで……』

「おやおや、お1人でどうにかなると?」

『無論……俺1人では……ない』


鎧男の後ろ、左右の手が地面から突き破る。

白く、大きい手。

否、白骨した手だ。

地面を揺らし、大きな音を立て、その姿があらわになっていく。

下半身が無く、やたらと長い背骨を尻尾の様にくねらせた巨大な骸骨。


ギチギチギチギチ


全身の骨を擦り合わせ、不快な音をたてる。


「これはまたデカいのを……いけますか?アレイヤさん」

「…………」

「アレイヤさん?」

「……………………」

「え?嘘!?気絶してる!?立ったまま!?剣を構えたまま!?」


器用な人だな、などとクレイは感心してしまったが、この状態のアレイヤを放置したままこの場で戦う訳にはいかない。

主の異変に気がついたミミアとメアがアレイヤの剣を鞘に戻し、左右から彼女を抱えた。


「離れに蔵がありますから、そちらに避難してくださいな。あそこなら頑丈ですし、結界もありますから」


ヨーコの言葉に続いて小さな従業員達の何人かが壁の穴を通じてアレイヤ達を囲む。


「お客様をご案内します」

「お客様をご案内します」

「お客様をご案内します」

「クレイ様、ヨーコ様、この場をよろしくお願いします」

「ヨーコちゃん」


ミミアの発言にヨーコが正す。

この状況でもヨーコちゃん呼びは外せないらしい。


「クレイ様、ヨーコちゃん、この場をよろしくお願いします」


メアの訂正にヨーコは満足そうに笑い、壁の穴へ行くように促し、彼女達はそれに従い壁の穴へと消えていく。

穴の向こうでは、残りの従業員に連れられて歩き始めたルニスとモニカも見える。


「クレイ様はあちらの大きな骸骨のお相手をお願いできますか?できれば遠くへと追いやって頂けると……ここであんなのが暴れたら宿が壊れてしまいます」

「無茶を言いますね」

「あら、貴女ならできますでしょう?」

「……」


ヨーコは目を細めた笑みをクレイに向ける。

確かに、例えあの骨が鋼鉄程の重さだったとしても、クレイではればある程度弾き飛ばす事が可能だろう。

しかし、クレイはヨーコの前で一度も自分の力についての情報を与えた事はない。

なぜヨーコがクレイに対してその様な評価を下すのか。

検討は付くが、確証はない。

それに、今は目の前の事態に対応すべきだ。

クレイはそう判断した。


「わかりました。でも、そっちの鎧の男、多分強いですよ」

「お気遣いありがとうございます、なるべく穏便に片付けるよう心がけます」


妙に含みのある返答だが、勝算はあるようだ。

クレイはヨーコの言う通り、巨大な骸骨に目標を定める。


(相手の気を引いて引っ張るのも良いけど、もっと手っ取り早くいきたいな……試したいモノもあるし)


クレイは右手に力を込め、武器を呼び出す。

手のひらから光が伸び、伸びた光が途中で膨らむ。

光が消えると、クレイの手には巨大なハンマーが握られていた。


「おやおや、これはまた随分と……」


その様子をヨーコは目を細めて眺めていた。


「さて……そっち頼みますよ!」

「はい、いってらっしゃい」


小さく手を振るヨーコを背中に、クレイはあっという間に巨大な骸骨の眼下へと詰める。

振りかぶりながら、跳躍。


「ぶッ飛べ!」


体を勢いよく捻り、骸骨のアゴ下へハンマーを叩き込む。


ガゴォンッ!!


すさまじい轟音を立てながら、骸骨は放物線を描いて飛んでいく。


(顎を砕くつもりで叩き込んだんだけど……思っていたより硬いな)


着地したクレイは骸骨を追いかけて駆けて行く。


「せっかくの相方が飛ばされていくのを黙って見ていてよかったんですか?」

『アレはあの程度では壊れん……』

「そう……」

『目的はお前だ……四肢を()がれたく無ければ……』


鎧男の眼前で青い火が爆発した。

だが、鎧男はわずかに怯んだ程度だった。


「くどいですよ……野蛮な人も、しつこい人も、私……嫌いなんですよ?」

『後悔するぞ……あの時の俺のままだと思うなよ』


鎧男はヨーコに向けて武器を構えた。


※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※


「こちらです」

「こちらです」

「こちらです」

「こちらです」


小さな従業員達を先頭にルニス達は蔵へと向けて進む。


――ガゴォンッ!!


背後から体に響くような凄まじい音。

今いる位置から直接様子を伺うことはできないが、どうやら戦闘が始まった様だ。


「モニカ、大丈夫、クレイさんは強いから」

「ルニス様……」


以前のルニスなら、避難せず、無謀にも戦うことを選んでいただろう。


「悔しいよ、でも……いつか……」


モニカはルニスの表情からは強い意志のようなものを感じていた。


(ルニス様は強くなられた)


ルニスはクレイと出会って、変わった。

正直、出会ってしばらくは妙な方向に変わってしまったが、それでも今は良い方向に向かっている。

モニカは今ここにはいないクレイに感謝した。


「あちらです」

「あちらです」

「あちらです」

「あちらです」


従業員の示す先に白い壁で覆われた小屋が見えた。

あれがヨーコの言う「蔵」らしい。

従業員が重い扉を開く。


「「…………」」


皆が蔵へと入ろうとした時、アレイヤを担ぐミミアとメアの足が止まった。


「ミミアさん?メアさん?」


モニカの呼びかけに2人は反応せず、じっと左側を見つめている。

2人の視線の先をモニカは追うが、夜の暗がりが広がっているだけだった。

ミミアとメアの表情が険しくなる。


「ルニス様、モニカさん、アレイヤ様をお願いします」

「ルニス様、モニカさん、アレイヤ様を蔵へと運んでください」


突然の事に訳も分からないまま、ルニスとモニカはアレイヤを2人から引き継ぐ。


「お2人は……」

「お願いします」

「早く」

「行こう、モニカ」


何かを察したルニスがモニカへ蔵へと入るよう促し、ミミアとメア以外の人々が入ったことを確認して扉を閉めた。


「「…………」」


2人は夜の暗がりへと歩いていく。


「おいおいおい、何で分かっちまったのかなぁ!?」


暗がりからぬるりと全身が茶色の毛で覆われた、獣の顔をした男が現れた。


「油断したところをコイツで背中からズバッといくつもりだったのによぉ!」


男の両手には鎌が握られている。


「ま、いいわ、お前ら肉が柔らかそうで斬りがいがありそうだ」

「「………」」

「何だよ、だんまりかよ?俺は"カマイタチのギンジ"だ。お前らは?刻む前に名前聞いといてやるよ」

「……ミミアと申します」

「……メアと申します」


ミミアとメアは同時に一礼した。


「「アレイヤ様は私たちがお守り致します」」


それぞれの戦いが、始まる。

話が無理矢理で申し訳ないです。

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