消えぬ疑問と布団の数
ようやく続きが書けました。
色々と限界を迎えたルニスを背中で見送る。
最初からこうすればよかった。
クレイは元男性という事もあってルニスとの混浴に早々慣れてしまい、ルニスは逆にクレイとの混浴に気が動転してしまった事で今の今までその発想に至らなかった。
いくらか時間をおいてクレイも温泉を出る。
扉を僅かに開け、ルニスが居ない事を一応確認してから脱衣所に入った。
あの紙が一体何なのか、温泉に浸かりながら答え出る事は無かった。
青い火を纏い、宙に浮くだけなら良いのだが、それ以外の効果を持っていた可能性も十分にあった。
紙に書かれていた陣の意味が分かればどの様な効果を持ったものなのか分かるのだが、クレイ自身にそういった知識は無い。
発動を直接目で見ればクレイなら分かるかもしれないが、その場合、ルニスに脅威が及んでしまう。
もっとも、あの紙にそこまで事ができる魔力の類が込められている様子は無かったのだが……。
荷物を置いた2部屋の内、アレイヤ達の声がする方の部屋に入る。
部屋にはモニカ、アレイヤ……そしてアレイヤが丸太にしがみつく様に抱きかかえられているミミアとメアが居た。
かなりの力だったのか、それとも長時間もの間抱きかかえられていたのか、ミミアとメアは疲労と諦めが混ざった様な表情をしている。
とりあえず、温泉の二の舞にはならなかった。
……のは良いのだが、やはり食事の後からアレイヤの様子がなんだかおかしい。
とは言え、ちょうど皆が居るので温泉での事を伝えておきたい
「あの、アレイヤさん……?」
「な!何かしら!?」
「あ、いえ、先ほど温泉に浸かっていた時にですね」
「使っていた時に……?」
「青い火がフワフワ浮いていて」
「あーーー!聞こえなーーーい!聞こえませーーーん!」
「え?ちょっと」
「適当言って私を驚かせるつもりでしょぉ!もー!」
「ぐえ」
「うぎ」
子供の様に駄々をこねるアレイヤの腕に力が入り、腕の中にいるミミアとメアが小さなうめき声あげた。
「クレイ様……今のアレイヤ様は繊細でございます」
「クレイ様……今のアレイヤ様を刺激しない様お願いします」
「あ……うん」
このまま話を続ければ彼女達の身が危ない。
仕方ないが、後回しにするしかないようだ。
手持ち無沙汰で周囲を見渡す。
何かは分からない緑の繊維が織り込まれた板が並べられた床。
壁は他の内装と同様に直線を基調とした精密さが際立つ作りなっている。
そこであることに気が付いた。
寝床が無い。
「あれ?ベッドは無いんですか?」
「ベッドはこちらに」
モニカが扉を開くと、そこには四角く薄い布の袋が2枚重ねたものが床に4つ並んでいた。
枕もある。
「随分変わったベッドですね」
「アズマでは"フトン"というらしいですよ」
クレイは「持ち運びが簡単そうだ、野宿に使えるかもしれない」などど考えていたが、このサイズを丸めてもかなりの大きさになりそうだ。
それを必死に背負う自分の姿を想像し、諦めた。
「あれ?」
フトンが4つ。
つい男湯に入ったときの感覚で女性部屋に4人で4つのフトンで納得仕掛けたが、今の自分は女性なのだ。
布の袋も枕の数も4つでは足りない。
「あの、モニカさん1つ足りないですよ?」
「え?1、2、3、4……合っていますよ?」
「でも、ここには5人……」
「それはですね……フフフフ」
モニカがヨーコの様な笑いを浮かべ、続ける。
「クレイ様はルニス様と同室です」
続きが出来次第投稿します。




