ご挨拶
書き始めるまでは簡単に書けると思っていました。
謎のハイテンション・アレイヤから旅行の同行を依頼を受けてから1週間後。
旅行、当日。
クレイはフレズガルド家へ赴いていた。
ちなみに、アレイヤのガバガバな伝達を補う為にフレズガルド家の使いが「当日の朝にフレズガルド家へ来るように」と伝えに来ていたからなんとかなっているのだが、この情報がなかったら彼女はどうするつもりだったのだろうか。
伝達に来た人から微妙に漏れる疲れの色からアレイヤの使用人達の苦労を何となく察してしまう。
フレズガルド家では既に出発の準備は整っており、数台の馬車が整列している。
その傍らにはアレイヤ達が椅子に座り、テーブルを囲んでいた。
どうやらクレイ待ちだったらしい。
「すみません、待たせてしまったようで……」
「あぁ、気にしなくていいわよ、出発前の小休憩ってところだったから、むしろ丁度いいくらいよ」
アレイヤの隣には白髪オールバックの男性とアレイヤと同じ金髪の女性が座っている。
この2人がおそらく彼女の両親なのだろう。
「私がアレイヤとルニスの父、ベルガッドだ」
「母のミエナです」
「クレイです、宜しくお願いします」
「そうか、君がアレイヤから話のあった……」
「はい、今回護衛を務めさせていただきます」
作法というものはよく分からないが、とりあえず丁寧に対応する事に務めた。
ベルガッドはクレイを視線を上下に動かしながら観察する。
この視線には覚えがある。
親子共通の癖なのだろうか。
「なるほど……アレイヤ、もしかしてアレか?」
「アレです」
ベルガッドが含みのある質問をアレイヤに投げ、アレイヤは同様に含みのある形で答えた。
「あらあらまぁまぁ」
「ハッハッハッ!なるほど!そうか!ルニスの事、よろしく頼むよ!」
アレイヤの回答にベルガッドとミエナが妙に湧き出す。
自分が1等級冒険者であることを見抜いたのだろうか。
その辺りの事は事前にアレイヤが説明していてもおかしく無いのだが……。
よく分からないが、改めて護衛のお願いをされているようなので答えておこう。
「……?はい、了解しました」
「あらあら!まぁまぁ!」
「これはフレズガルド家も安泰かもしれんなぁ!」
どうやらルニスは両親から時期家長として期待されているようだ。
「そういえば、ルニスさんはどこに?」
「あぁ、ルニスならそこで小さくなってるわよ」
アレイヤが送るの視線には、何故か物陰で小さくなっているルニスが居た。
「ルニス様、いつまでもそこに居ては出発できませんよ」
「わ、分かってるよ……」
そばにいたメイドが物陰から出るように促され、ルニスがトボトボとこちらに歩いてくる。
「あ、あの、く、クレイさん、お久し……ぶり……です」
まともに目線を合わせられず、ややうつむいたままのルニス。
「お久しぶりです、ルニスさん。調子が悪い様ですけど、大丈夫ですか?」
クレイは体調不良ではないかと判断し、ルニスの顔を覗き込む。
前かがみになったことで、ルニスの視界に白いワンピースの隙間が入り込む。
「あぁ、いえ!全く!大丈夫です!ご心配無く!」
ルニスはビシッと背筋を伸ばし、無自覚な誘惑を振り解く。
「クレイ様、お久しぶりです。あの一件以来ですね」
ルニスのそばにいたメイドがクレイへ会釈をする。
このメイドには見覚えがある。
確か、ルニスと初めてあった時に彼をたしなめていたメイドだ。
「申し遅れました、ルニス様の身の回りのお世話をしておりますモニカと申します」
「ルニス様は本日の旅行にクレイ様が同行すると聞いて、それはもう楽しみにされていたんですよ?」
「も、モニカ!何を勝手に!」
ルニスの抗議をモニカは笑顔で受け流している。
何だかはメイドと言うよりお姉さんといった感じだ。
……アレイヤよりも。
「そうだ、ついでに私のメイド達も紹介しておくわね」
「ついでと言うのは心外ですアレイヤ様」
「ついでと言うのは悲しいですアレイヤ様」
「うわッ!いつの間に!?」
音も無く2人のメイドがアレイヤの背後に現れた。
双子なのだろうか、顔の見分けも声の聞き分けも全くつかない。
「ミミアです」
「メアです」
「「お初にお目にかかります、クレイ様」」
双子のメイドは同じタイミングでお辞儀し、挨拶の言葉を述べる。
クレイにはどちらがミミアなのかメアなのかさっぱり分からない。
アレイヤは見分けがついているのだろうか……。
一通りの挨拶を終え、アレイヤの両親達とクレイ達はそれぞれ旅行へと向かう事にした。
またしばらくお待ちください。




