とある場所にて
短い割にかなり手こずってしまいました。
馬車に揺られる中、アレイヤの話を聞く。
引き渡されたノーセンは牢に放り込まれた。
しかし、今朝になって牢を監視していた兵士達とノーセンが殺されているのが発見された。
兵士たちは全て急所を一撃。
抵抗した様子も無く、相当な手練れの様だ。
そしてノーセンは牢屋の中で、数々の拷問の痕があったとの事だ。
そして首を落された。
彼の被害に遭った者の中に過激な者がおり、そいつが……と言えなくも無いが、リビアから聞いた被害で兵士達まで殺すとは思えない。
それに、わざわざ頭を持ち去る理由が無い。
一体誰が……。
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ローブを羽織った中年の男性が1人、椅子に座り本を読んでいる。
部屋は暗く、ロウソクが1本、男のすぐ横にあるテーブルで小さく周囲を照らしていた。
そんな中でも男は構わず本を淡々と読み進めていく。
音もなくロウソクの明かりの前に誰かが現れた。
髪の毛は整えておらずボサボサで、生気を感じない程の白い肌をした、線の細い若い男だ。
ローブの男は、突然現れた色白の男に動じることなく、視線を本へと落としたまま口を開いた。
「終わったか」
「はい」
色白の男は右手に持った包みをテーブルへ置き、開く。
包みの中身は額に幾何学模様が描かれた男性の頭部……ノーセンだった。
ローブの男はちらりとノーセンの頭部に視線をそらすと、すぐに本へと戻した。
「ミンサめ……欲の深い男だとは思っていたが……『力』を与えた途端に抜け出すとは……手間をかけたな」
「ご命令とあれば。それに、俺個人としてもミンサは許しておけぬ者でしたから」
ミンサはノーセンという偽名を使っていたが、指名手配された上に捕縛された事で色白の男に知られる事となり、今はこうして首を晒している。
「額の傷については、聞き出せたか?」
「はい、この傷はアレイヤという者につけられたそうです」
「そうか……」
この『力』は我々の秘匿された技術。
例え破壊されているとしても、額の魔法陣の情報を他所の人々に晒すわけにはいかない。
だからこそ、わざわざミンサの頭を回収させたのだ。
ミンサ自体はさほど強くは無いものの、彼の『力』は相手が何も知らずに対峙したのなら、かなり強力な武器になる。
それが、陣を破壊されて戻ってきた。
しかも、あの10秒という制限を考えれば、迷わず陣を狙ったと考えるのが自然だ。
アレイヤという者は、魔法陣が『力』の源である事を知っている。
「更に、伝えておきたい事項が」
「何だ?」
「ミンサが言うには"『力』が通じなかった少女が居た"と」
「何?」
――通じなかった。
つまり事前に『力』についての知識があり、対策をしていた……と言う事になる。
アレイヤが魔法陣を破壊できたのも、その少女が関係している可能性は大いにある。
「銀髪、褐色の肌、黄色い瞳の少女で、名をクレイと」
「……」
「いかがされますか?」
「その2名、生かしてはおけないな……特にそのクレイという者は最優先だ」
さて、次はどうしましょうか……。




