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メルボアの街と武具屋

地の文が一人称なのか三人称なのか良く分からない文章ですねコレ。


※3話に「隠しポケットのお金は無事だった」的な文が抜けていたので修正しました。

「空だ!あの時はもう無理だと思ってたけど……」


クルトはダンジョンの外に出ることができた。


あの後からミノタウロスに遭うことは無く、その後のモンスターもクルトの敵では無く、経験値の足しになることも無かった。


ダンジョン周辺の森を抜け、街――メルボアへの続く道までのルートは目印を置いてある。

それを辿れば地図を見なくても街へ帰れるハズだ。


「確かこの辺りの木の根本に……」


確かに目印はあったが、なんとも雑に崩されていた。

『紅の爪』の仕業だろう。

とは言っても、雑なだけあって「目印があった」という痕跡はしっかり残っているので、それを辿れば良いだけだ。


次の痕跡も、その次の痕跡も崩されていた。

「案内役は不要」と言った割には、その案内役が設置した目印はちゃんと辿(たど)っている辺り、何とも(こす)い。


ともあれ、崩された目印を辿り道へと出たクルトはメルボアを目指した。


※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※


街へと戻ってきたクルトはコート姿をどうにかする必要があった。

今の姿は少々怪しい格好だ。

実際、周囲の人達の視線がチクチク刺さる。

何を着るかは「この先をどうしたいか」で決まる。


とは言っても、クルトは今まで冒険者の案内役として長年やってきた。

今さら他の事で身銭を稼ぐ自信は無い。


「やっぱり冒険者として生活するしか……ないかな?」


であれば、向かう先は武具店だ。

この肉体に武器や防具が必要とは思えないが、防具も武器も持たない冒険者に仕事が来るとは思えない。

手持ちは決して多くはないが、必要経費と割り切る事にした。


※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※


武具店『心得』、初心者から中級者の冒険者向けの武具店。


「ほい、いらっしゃ……うおッ!お前さん、何だその格好!?」


威勢の良い挨拶がクルトの身姿を見て驚きに変わる。

コートだけの少女がやってきたら驚いても仕方がない。

しかもミノタウロスにぶっ飛ばされたせいで少しだがボロボロになっている。

幸い、見えてはいけない部分は隠せてはいるが。


「あの、このお金で買えるナイフと防具をお願いします」


ここ選んだ理由は今の所持金でも買える武具がある事、そして……


「お、おう……ベラー!女の子のお客さんだ!採寸頼むー!」

「はいはいはい、お待たせしました……わッ!何だい!?その格好!?」


……また驚かれてしまった。

とにかく、店主の奥さん、女性の店員が居るのだ。

防具を買う場合、採寸を行う。

女性の体になった手前、流石に男性に採寸させるのは気が引ける。

ただ、問題があるとすれば……


「ええと、採寸だったね、それじゃあ男の目が無い所でやらなくちゃね、はいこっち来て~、あ、そこ段差があるから注意してね、はいはいはい、じゃあ恥ずかしがらずにコート脱いでね~、あらま~綺麗な肌じゃないの~、若いって良いわね~、私も貴女くらいの頃はそんな感じだったのよ?『花のベラ』なんて呼ばれててね、本当よ?ところで貴女、この辺じゃ見ない感じだけど何処のご出身?あらやだごめんなさい、踏み込んだ話を振っちゃって、許して頂戴?それにしても……そうそう……他にも……」


一度口を開いたら止まらない、話が長いのだ。


「あ、そうだ、まさか貴女、あのコートの上に防具を身につけるつもり?駄目よ~、女の子なんだから身なりにも気を使わないと!余った白い布で良ければあたしが作ってあげるわ!そうしましょう!とりあえずコート今は着てて、はいコレ、寸法書いた紙、とりあえずコート旦那に渡して来てね、あたしは貴女の服を作ってるから」

「え、あ、はい」


そう言ってベラは店の奥から持ってきた何枚かの白い布を手早く加工し始めた。

何だか勢いが凄かったな……などど思いながら、クルトは店主に紙を渡し、防具を選ぶことにした。


「何か希望はあるかい?」

「希望……ですか……」


店主の問いにクルトは悩んだ。

正直なところ、ミノタウロスの蹴りを「痛い」で済ませるこの肉体なら、予算内で買える防具の性能では、あって無いようなものだ。

とりあえず「私は冒険者として必要最低限の準備はしています」という体裁が取れればいい。

いたる所に防具を身につけて、動き辛くなるのは避けたい。

もっとも、全身防具を揃える予算は元々無いが。


「では、胸当てとブーツをお願いします」

「よし分かった、となると……胸当ては……う~ん、嬢ちゃんが身に着けられるモノってならと……コレしかないな」


そう言って店主は左胸のみの胸当てを店内から選び出した。


「コレなら革紐を調整すればいけるはずだ」

「では胸当てはこれでお願いします」

「あいよ、ブーツはそこに並んでいるヤツから選んでくれ、とは言ってもブーツも合うサイズはそこまで多くはないけどよ」


履き口か足首より少し高めのブーツを選んだ。

もう少し履き口が高めの方が好みなのだが、合うサイズが無い以上、これは仕方ない。


店主が選んだ胸当てとブーツを調整していると、奥からベラが戻ってきた。


「服、できたわよ、さ、奥で着替えちゃいなさいな」

「は、早い……」

「ハハハッ!武具店のおカミを甘く見るんじゃないよ!」


ベラに店の奥へグイグイと押され、白い服へと着替えさせられた。

白いワンピースの様な服だ。


「本当に出来上がってる……けど……」


背中の部分が丸見えだ。

それに、スカートの丈が少し短くないだろうか。


「ごめんなさいね、思っていたより布の余裕が無くて、ちょっと大胆な服になっちゃったわ」


……ちょっと?

ちょっとなのだろうか、これは。


「その代わりに予備で同じ服をもう一着用意できたわ、冒険者になるんでしょう?だったら服が汚れたり傷がついたときの予備は必要じゃない?」


(その予備を考えなければちゃんとした服が作れたのでは?)


クルトはそう思ったが、服を買う予算を考えていなかった。

残ったお金で服を買うと余裕が無くなる、有り難く服を頂くことにした。


「後はナイフを1つ……」

「コレを持っていきなさい!」

「え、このナイフは……」


ベラがいつの間にか持ってきたナイフをカウンターに置いた。

そのナイフは明らかに予算を超えた物だ。


「いいの!いいの!ね?良いでしょ?……ねぇ?」

「……ハイ」


どうやらベラに気に入られたようだが……何だか店主が可愛そうになってきた。


「お金貯めたら、また来ますので……」


クルトは申し訳なさそうに武具店『心得』を出た。


――次は冒険者ギルドだ。

思いつく場面と場面をつなぐ話を作るのが、やってみると予想以上に大変ですね。

「皆さんよく書いてるなぁ」と改めて思いますね。

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