アレイヤ対ノーセン②
続きました。
あれから何度『敗北』しただろうか。
その度にノーセンが指定したものを脱いでいき、私の身につけているものは下着だけとなっていた。
「いい眺めだな、アレイヤ?」
「ふざけないで!」
羞恥に震えながら剣を握り、座っているノーセンへと走る。
彼が上半身を捻り、反らす。
私はそれに合わせて、先程まで彼の上半身があった場所に剣を振る。
当然、当らない。
更に脚が交差するように左足を踏み込む。
「ぐッ……」
前に出ようとした右足が左脚に引っかかり、転んだ。
手を離れた剣が転がっていく。
「おいおいおい、ここまでハンデをやっても勝てないのか?そら、下着だ、脱げ。もう面倒だから両方脱ぐんだ。まずは上から脱いでもらおうか」
「……わかったわ」
私はゆっくり立ち上がり、彼の言う通り胸を隠している布を脱ぐ。
脱ぐ最中に大きく揺れる胸を見て、彼は満足そうに笑っている。
続いて下も脱ぎ、身に付けられるのは剣だけとなった。
この歳になって他人に裸を晒すのは耐え難い。
手や腕を使い、最低限身を隠した。
「おい、隠すなよ?」
「……ッ」
ゆっくりと手を離し、腕を降ろす。
「ハハハ!無様だな!アレイヤ!」
彼の言葉がこじ開けるように私の心に突き刺さる。
今の私は見た目よりもずっと小さく見えただろう。
「剣はどうした?拾わないのか?」
彼に促され、重い足取りで剣を拾う。
「それで?まだやるかい?ククク……」
彼は勝利を確信した笑みをこぼしながらこちらに歩いてくる。
腕が上がらない。
剣はこんなにも重たかっただろうか。
彼は私の間合いに易々と入り込むが、それでも私の腕は動かなかった。
あぁ、ついに私は――
「……負けたわ」
自ら剣を落とし、絞り出すように敗北の声を漏らした。
「それで?まだ言いたい事はあるか?」
――ついに来た。
身体を押しつぶすような羞恥心が和らいだ気がした。
「忠誠を誓うわ、この身体と心はアンタのモノよ」
私は跪いて彼にそう誓った。
「ほう?なら俺が"抱かせろ"と命じたら?」
「アンタが望むなら、いくらでも」
「ハハハハ!そうかそうか!いいだろう!今からお前は俺のモノだ!」
―※―※―※―※―※―※―※―
――おかしい、何もかもおかしい。
目の前のあらゆる出来事がリビアには信じられないものだった。
アレイヤの事を深く知っている訳ではないが、どんな目に遭ってもあんな男に跪くような人では無い。
そもそもあの戦い自体おかしい。
アレイヤに比べれば自分は素人だ。
それでも、アレイヤがわざとノーセンに負けたのは分かる。
それ程までに彼女の行動はおかしかった。
――何かをされた?
――分からない。
だが、アレイヤを救えるのは自分しか居ない。
「アレイヤさんは渡しません!」
リビアは剣を抜き、構える。
相手をよく見て、油断は禁物だ。
「ああ、そういえばもう1人居たな」
「アレイヤさん!今助けますから!」
「その必要は無いわ、私はもうこの人のモノなの」
「……とにかく助けますから!」
その言葉にアレイヤは剣を拾い、前に出ようとするが、ノーセンがそれを制止した。
「いい、俺がやる」
「わかったわ」
その言葉にアレイヤはあっさりと譲った。
リビアにとっては好都合だった。
一体どうやってかは分からないが、アレイヤの異常はノーセンが原因なのは間違いないだろう。
彼を倒せばいつも通りのアレイヤを取り戻せるかもしれない。
とにかく、今はノーセンを倒す事に集中すべきだ。
リビア、思い出せ、何故冒険者になったのかを。
ノーセンに敗北して彼のモノになる為じゃないか。
打ち込んでみると思っていたよりスケベじゃないですね(感覚麻痺)




