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詐欺師ノーセン

続きました。

双子岩……。

首都周辺も知ってはいるが、双子岩は聞いたことがない。

クレイがクルトの時に場所を区別しやすくする為に目印に名前を付ける事があった。

恐らく、その双子岩もそんな感じでペアの冒険者の間だけで使われているものなのだろう。


(双子……似た形の岩が並んているって事か?まぁ、双子って言うくらいだし)


――それなら。


「それが双子岩がどうかはわかりませんが、心当りはあります」


―※―※―※―※―※―※―※―


「そのノーセンってヤツについて何か知ってる?」


クレイの案内の(もと)、双子岩(と予想される場所)へ向けて移動中アレイヤがリビナへ質問を投げかけた。


「ここ1ヵ月程前から一部の冒険者の間で「街の外で冒険者相手に適当なウソをついて金品をだまし取るヤツが居る」って噂になっていたんです」

「適当な嘘って……怪し過ぎでしょ、何でホイホイ金品を渡しちゃうのよ」

「被害者は皆「その時は信用できた」と、でも後になって思い返すと「どう考えてもおかしい」と騙された事に気付くって感じです」

「何ソレ?」

「私は現場に居なかったので何とも……とにかく、被害が冒険者のみだった事と被害額も酷くなかったので、せいぜい「初対面の人間に安易に金品を渡さないように」と一部で騒がれる程度でした。それが……ええと、モノガッツ?モノゴッツ?とか言う貴族が被害に遭いまして、その貴族が怒り心頭で被害を訴えた事で現在の様に手配書が配られた……と言うワケです」

「なるほどねぇ……それにしても……」


アレイヤが手配書の似顔絵を眺める。

短い頭髪、額当てを付け、鋭い目つきをした男が描かれている。


「そんな口が上手い男には見えないんだけど」


―※―※―※―※―※―※―※―


道から少し離れた場所に大人よりもひと回り大きい岩が二つ並んでいた。

その岩は左右対称で大きさも形も似ている……と、言えなくもなかった。


「ここだと思うんだけど……」


正直、ここでなかったらどうしようもない。


「確かに双子岩って言われれば……双子岩ね」

「そうですね……」


岩を見て2人は微妙な評価を下したが、これ以外の手掛かりが無い為、とりあえずこの岩は双子岩ということにした。

しかし、周囲にクレイ達以外に誰かが居るような気配も痕跡も無い。

どこかに身を隠しているのだろうか。

だとしたら、1つだけ可能性がある。

クルト()だった時から使っていた手帳をめくり、この辺りの情報を探す。


「ええと確か……」

「その手帳、いつから冒険者やってんのよってくらい随分と書き込んでるわね」

「ええと……日々の賜物ってやつですよ」

「ほへぇ……私よりずっと若いのに……凄いです!」


下手に受け答えをするとボロが出そうなので、感嘆の声を漏らす2人を放置する。


「ありました……こっちです。人が滞在できるかどうかは分かりませんが洞窟があります」


クレイが(しめ)す先に小さな丘があり、その裏側に洞窟の入口があった。


「ダンジョン?」

「いえ、魔光石とかいうのが無いので違うかと思います」

「入ったことは?」

「いえ……今まで入る必要が無かったので……」

「そう、仕方ないわね、入るわよ」


クレイとアレイヤは手ごろな木の枝を見つけ、手早く布を巻き、油を染み込ませて松明を作る。

リビナがその2人を見ながらおぼつかない手つきでそれに続いた。


―※―※―※―※―※―※―※―


洞窟の通路は狭くも広くも無いと言った感じだ。

道もうねったりせずまっすぐで、意外と外の光が洞窟を照らしている。


「ここにノーセンが居るんでしょうか……?」

「まだ何とも、既に別の場所に移動しているという可能性もありますが……」


リビナの小声での問いかけにクレイが同様に小声で答える。

実際、例の冒険者のペアがノーセンと出会っていたら潜伏場所を変えるのが自然だ。


入ってすぐに分かれ道にぶつかった。


「ここは……そうね、二手に分かれて私とリビナは右、クレイちゃんは左ってのはどう?」

「え?大丈夫ですか?迷ったりしないで下さいよ?」

「大丈夫よ!秘策があるわ!」

「……」


本当に大丈夫なのだろうか。

この二手に分かれるという提案も効率などを求めたものではなく、1/2で戦闘を独占できる方を選んだと言った感じだろう。

アレイヤの後ろでリビナが物凄い不安そうな顔をしている。

しかしクレイはこういった時にアレイヤをどう抑えればいいのか分からない、諦めて欲しい。

少なくとも、アレイヤが居れば遭難以外で命の危険はそうそう無いはずだ。


「無謀な前進はしないで下さいね、お願いしますよ?」

「了解りょーかい!」


―※―※―※―※―※―※―※―


クレイと別れてアレイヤとリビナが右の通路を進む。


「あの、アレイヤさん……その秘策というのは……」

「左手を壁に付けながら歩く!これで迷わないわ!」

「あぁ……神様……!」

「待って、先が明るいわ。火の明かりね」


ほとんど歩いていない。

右の通路はそれ程深くないのかもしれない。


2人が明かりの先をのぞき込むと、中は意外と広く、その中央で男が背を向けて胡坐(あぐら)をかいて座っている。

背を向けられていてはノーセンかどうか確認はできない。

ならば顔を見せてもらうだけだ。

アレイヤが乗り込み、男へ叫ぶ。


「そこのアンタ!ゆっくり振り返って顔を見せなさい!」


男はゆっくりと立ち上がり、振り返る。

短い頭髪に額当て、鋭い目つきの男。

ノーセンだ。


「当たりね。アンタ、ノーセンね」

「そうだ、嬢ちゃんは……おおっと、噂のアレイヤか。こりゃ大物に狙われたな」


ノーセンが落ち着いた低い声で答える。

彼の足元には明らかに彼の物ではないであろう荷物がいくつか散らばっていた。


「それ、アンタのじゃないわね。数日前に冒険者が2人、ここに来たでしょ?」

「あぁ、あいつ等か……あいつ等なら"分かれ道を左に行くとお宝があるぞ"って言ったらすっかり信じて行っちまったぜ?」

「それで何で荷物を置いていくのよ」

「"宝探しには邪魔じゃないか?"って助言したら置いてったのさ、奪ったワケじゃない」


だが、その冒険者達は帰ってこなかった。

『何か』があったと考えるのが自然だ。

となると、左へ進んだクレイに危険が迫っている。


「ん?後ろの嬢ちゃんの表情からして……もしかしてお仲間が左に行ったか?ハハハッ!そりゃご愁傷様だな!」

「どういう事よ……!」

「そのお仲間……生きて帰れないぜ?」

次回、ちょっとスケベ要素が入る予定です。

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