実地研修④
アレイヤさん活躍回です。
教室の外には数多くのゴブリンがひしめき合っていた。
数は多くないがオークの姿も見える。
「よっしゃ!コレよコレ!」
突然の状況に皆が驚き、怯え、警戒する中、アレイヤだけが意気揚々と前に出る。
「クレイちゃんはリーナの護衛に徹しなさい!冒険者達も手を出さなくていいわ!万が一討ち漏らしたヤツだけにしなさい!」
「え?ちょっと!?待っ……」
男性冒険者の静止も聞かず、アレイヤはモンスターの群れへと駆けていく。
向かってくるアレイヤを見て、オークが群れの前へと進み、大きな棍棒をアレイヤめがけて振り下ろした。
「グオォッ!」
「ふッ……せいッ!」
振り下ろされた棍棒をアレイヤは剣で受け流し、棍棒の側面を滑らせるように剣を振り上げ、棍棒を握っていたオークの右手の指を漏れなく切断した。
「グガァァッ!」
ドスンと棍棒が落ちるのと同時にオークが切断された痛みに呻く。
振り上げた勢いを横へ変えながら一歩前へ。
勢いを落とすこと無く、今度はオークの右脇腹に剣を当てる。
更に前進しながら、振り抜く。
深々と割かれた脇腹から臓物を散らし、オークは崩れる様に倒れる。
再び一歩前へ。
曲線を描きながらオークすぐ後ろにいた2匹のゴブリンの首を刎ねる。
「ギェギッ!」
1匹のゴブリンがアレイヤの顔めがけ、握りこぶしよりひと回り小さい石を投げた。
止まることなく剣の軌道を変え、やや上目に右下へと振る。
「カンッ」という音と共に石は方向を変え、アレイヤの頭上をすり抜けた。
石が当たった事により軌道が下へ落ちた剣は、始めからそれが狙いだったかの様に、アレイヤに跳びかかろうとしていたゴブリンの腹を裂いた。
そしてまた一歩進み、流れる様に斬る。
まるで事前に打ち合わせでもしたのかの様な動きで次々とモンスターを切伏せていく。
「す、すげぇ……!何やってるのかサッパリ分かんねぇけど……」
先程静止しようとしていた男性冒険者が感嘆の声を漏らす。
クレイ自身、以前の自分なら彼と同じ様にアレイヤの動きを捉えることはできなかっただろう。
それ程までに彼女の動きは凄まじかった。
「ま、こんなところか……怪我の影響も無いし、腕も鈍っていないわね。」
あれ程いた通路のモンスター達はアレイヤによって僅かな時間で全滅した。
初めてアレイヤが戦うところを見たが、まさかここまでとは。
「じゃ、2階層へ向かうわよ!」
アレイヤを先頭にして2階層への階段を登る。
十数人の足音に混ざりながら、何か乾いた音が聞こえ始めた。
階段を登るたびに、少しづつ音は大きくなっていき、クレイ以外にも聞こえる様になっていた。
もうすぐ階段登りきり、2階層へ到達する。
「ねぇ……この音ってもしかして……」
「多分、そうじゃないかと……」
2階層へ登った先には、乾いた音を鳴らしながら無数の枝を触手の様に動かす木々が居た。
次話投稿まで、しばらくお待ち下さい。




