実地研修②
続きました。
――実地研修当日。
校内ダンジョンの入口は後付けのフェンスで閉じられており、物理的な鍵と魔法による封が成されている。
白いブロックなどを積み、建物の様な外観になるよう飾られており、クレイの様な冒険者には「ここがダンジョンの入口です」と言われなければそうと分からないだろう。
ダンジョン前にはクレイとリーナ、生徒と付き人が5人ずつ、護衛として雇われたのであろう若い冒険者が2人、そして付き添いの教師が2人。
そしてアレイヤだ。
「いや~腕が治ったから、感を取り戻したいな~って思ってたところだったのよね」
彼女はそう言いつつ右腕をグルグルと回している。
「感覚を取り戻すのを優先するわ」らしく、鎧は身に着けていない。
腰にある剣もいつもの剣ではないが、かなり質の良い剣である事は分かった。
「アレイヤさん、その剣は……」
「ああ、コレ?一応リハビリだからね、ヘマして壊してもいいように街でテキトーなヤツを買ってきたわ!」
適当でそのレベルの剣が買えちゃうのか〜。
ちなみにクレイは安全とはいえダンジョンに入るということで、いつもの白いワンピースに胸当てを装備している。
やはりいつもの格好は落ち着く。
「あ、あれが噂のアレイヤか……」
「初めて見た……」
「聞いていたよりもずっと大きい……すげぇ……」
流石はアレイヤ、冒険者は勿論、生徒の間でも知る者は多い様だ。
早速皆の注目を集めている。
アレイヤへの視線がやや下なのは……まぁ、うん、分かるよ。
腕を回すたびに、それはもう揺れてますからね。
「アレイヤさん、そろそろ腕を回すのは止めておきましょう、お願いします」
「え?何でよ」
「あの、ほら……お願いしますホントに」
「う~ん?」
「意味が分からない」と言った風だが、アレイヤは腕を回すのを止めてくれた。
この人は他人の視線というのを気にしないのだろうか。
そしてアレイヤは屈伸を開始する。
「アレイヤさん!?」
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教師の先導でダンジョン内に入っていく。
いたるところをダンジョン特有の光る鉱石が照らす。
ダンジョン内の様子は他と変わらないが、モンスターが居ない。
正直なところ眉唾モノだったが、どうやら本当だったようだ。
「この様にダンジョンには光る鉱石……研究者の間では魔光石と呼ばれています。ダンジョン内でのみ発光し、何故ダンジョンの外では光らないのかは未だ不明です。研究が進めば夜の街を魔光石が照らす未来が来るかもしれませんね」
教師の説明を聞きながらダンジョン内を進む。
道幅は狭いところもあれば広いところもあり、この辺りも他のダンジョンと代わりはない。
それ故にモンスターが居ないという事が妙に引っかかる。
「事前に説明は受けていましたが、本当にモンスターが居ないんですね」
そう、教師に話を振る。
リーナの付き人という立場だが、建前上はこの学校の生徒なのだ。
これ位の質問1つくらい良いだろう。
「このダンジョンが校内に発生してからモンスターは一度も確認されていません、だからこそこうやって生徒を中に入れる事ができるんですね」
「なるほど……」
もう一人の教師がクレイの隣で小さな声で続ける。
「仮にもダンジョンという体面もあって生徒を分けて入れてるんですね、本当なら生徒をまとめて入れても良いのですが……」
「ボクとしては賢明な判断だと思いますよ」
教師は意外そうな顔をしてクレイから離れ、案内を再開する。
「さぁ、下の階層へ行きますよ」
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「これは……」
2階層に入り、短めの通路を渡った先は大きな空間が広がっていた。
そこには見渡す限りの木々が生い茂っている。
「学校ではここを『森林エリア』と呼んでいます、さぁ、進みますよ」
ダンジョン内で植物が自生しているのは初めて見る。
「ダンジョン内でこういった植物が自生しているのはとても珍しいそうです」
やはりそうなのか……。
教師の先導に従いながら、木々を観察する。
特徴的な、目印になるようなものは無いか――そういったものを探す。
――まぁ、元案内役としての職業病のようなものだ。
「……うん?」
そうして確認している内にある事に――確証は無いのだが――気が付いた。
いや、しかし、そんな事あるのだろうか。
「どうかしましたか?」
ちょっと周囲を見渡し過ぎたのか、リーナが声をかけてきた。
「あぁ、いえ、気のせいだと思います」
既に森林エリアを抜け、下へと続く階段が見えている。
どうやらこの階層は森林エリアだけの様だ。
エリアの端、階層前に到着し、皆が階段を降りていく。
最後尾に付いたクレイは振り返ってもう一度木々を見た。
向きの違いや僅かな差異あったものの、全ての木が同じ形をしているなんて事があるのだろうか。
案はあるのですが、書き貯めが終わったのでしばらくお待ち下さい。




