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暴食のデーモン

何とか書きました。

寝ます。

おやすみなさい。

周囲の人々から何かが抜けていき、気配のする方向に向かって何かが流れていく。

これは……生命力のようなものだろうか。

リーナ達はこのせいで?

だとしたらこれ以上生命力を奪われていくのは危険だ。

急がなければ。


寮の前に黒い肉の塊のようなデーモンが座り込んでいた。

座り込んだ状態で体長2m程度だが、とにかく横幅()が広い。

足元には割れたメダルと生徒が1人倒れていた。

あれは……ギリアンだ。

彼が何かやらかしたらしい。


「ウマい!ンマい!」


周囲のエネルギーを吸い込み、口の周りを長い舌でベロベロと舐め回している。

デーモンがクレイの存在に気が付いた。


「ん~?オメェ、何でピンピンしてんだ?」


何故かクレイはデーモンからエネルギーを吸い取られていなかった。

例えば、肉体とエネルギーの繋がりが強いせい……だろうか。


クレイの目にはそのでっぷりとした腹にエネルギーが集中しているのが見えた。

まだ消化はされていないようだ。

今なら間に合うかもしれない。


クレイは神剣を出し、デーモンの腹目掛けて剣を振る。

相手は歩くことを放棄している上に、あまり動きが速くない。

神剣がデーモンの脇腹を捉え、脂肪まみれの肉を割いていく。

が、神剣が止まった。

まだ数センチしか刃は進んでいない。


(この腹の肉、物凄く粘っこい!)


先程の勢いでは不足だったのだ。

デーモンの硬さを低く見積もった事、予想以上に成長した能力を必要以上に抑えた事が裏目に出た。

仕切り直して、もっと出力を上げた一撃を放たないと……!


「んべぁ」


数センチとはいえ腹を切られたデーモンは意に介さず長い舌で神剣を握るクレイの両手をベロリと舐め、そのまま腕、そして頬を舐める。

非常に不快だが、構わず神剣を引き抜く。


「え?」


――はずが、スルリと神剣を手放してしまう。

更に足元がもたついていく。


「ウマい!オマエ、凄くウマい!」


舌で直接力を削り取られた……!

まずい、何とか距離を取らねば。

間合いの広い神槍を呼び出す。


――カランッ


神槍が掴めない。

予想していた以上に力を奪われたようだ。


「あがッ!」


デーモンの両手がクレイの頭を掴み、持ち上げた。

デーモンが顔が目の前に迫る。


「エハハ、いただきまーす」


デーモンの舌がクレイの口へ伸びていき、硬く閉ざした口をこじ開けようと唇をベロベロと舐め回した。


(うげぇッ……!ここままじゃ……)


顎の力をが抜けていく。

舌が唇の隙間を潜り、頬の裏をベロベロと往復する。

顎の力が更に抜ける。


「おごッ!」


口の中へズルズルと舌が潜り込み、力が抜ければ抜ける程、舌はクレイの奥へ奥へと進む。

デーモンは更に舌を奥へ入れる為に顔をクレイへ近付けていく。


「お゛ッ……お゛ッ……」


体が舌を吐き出そうと無意識にもがくが、それを押し返してデーモンの舌はクレイの内側から力を舐め取っていく。


「あ゛ッ…………あ゛ッ…………」


嗚咽の間隔が徐々に長くなっていく。

既にクレイの手足は糸の切れた人形の様に垂れ下がっていた。


クレイの()を堪能したデーモンがズルリと舌を抜き、両手を放す。

倒れるワケにはいかない。

何とか踏ん張り、膝をつく状態で持ち堪えた。


「ゲホッ、ゲホッ、オヘッ……」

「ウマい!ンマい!ンマいゾォ!ゲハハハハ!」


手足が震える、この姿勢を維持するのだけでも精いっぱいだ。


「もっと!もっと!オマエ、ウマい!」

「うッ……」


顔を勢いよく舐め取られ、後ろに倒れてしまう。

デーモンは動かないクレイの腹、上半身を丹念に舐め始める。


「あッ……くッ……」


体の内側から力が少しずつ供給されていくのを感じる、潜在的な力はまだ尽きていないようだ。

だがそれ以上にデーモンに削り取られる量が多い。

このままでは全ての力を削り取られてしまう。

一瞬で良い、何か力を取り戻す方法は無いのか。


視界の隅にデーモンの腹に刺さったままの神剣が見えた。

そうだ、神剣と神槍を出したままだ。

……あれを一度戻せば、あるいは。


神剣と神槍を消すと、その分の力が戻ってきた。

身体を動かすには、十分。


上半身から下半身へ伸び始めた舌を躱し、神剣を再び呼び出す。

神剣から感じる力は万全の状態と比べて弱いが、この憎たらしい舌を切り落とす位の事はできる。


「アギャァァァァァッ!(ひた)が!ひたがァァァ!」


一度距離を取り、呼吸を整える。


今の状態でどこまでの神剣の威力を出せるだろうか。

必要な力が湧き出てくるまで待ちたいが、あの腹に溜まった生命力が消化され、手遅れになってしまう。

迷っている暇はない、無理やりにでも神剣の出力を上げてこのデーモンを叩き斬る。


デーモンが地面に尻を擦りながら少しづつクレイに近づいていく。


「スゥ……フゥーー」


深呼吸。

意識を剣に集中させる。

この神剣に今持てる全てを。

神剣の(まと)う光が強くなっていく。


「でやァァ!」


縦一閃。

(まばゆ)い光を放つ神剣が、今度こそデーモンの腹を裂く。

断面から光が放たれ、デーモンを包み、ついには光の柱となって天へと伸びていく。


「アビャアァァ……ァ………ァ…………」


光が消えた時には、デーモンは完全に消滅していた。

後に残った生命力が持ち主の元へ散っていく。

間に合った。

これでリーナ達も目を覚ますだろう。

ヤバい、もうフラフラだ。


「流石に今回は……ヤバ……かっ………た…………」


クレイは崩れ落ちるように地面へ倒れた。

食べた朝飯はどこにいった。

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