始まる異変
辻褄合わs……お話を考えるのに手間取ってしまいました。
近くの外壁には乗り越えるためのロープが掛けられていた。
クレイの報告を受けた学校は校内、特に彼等の目標とされるリーナにはクレイとは別に学校側から護衛が数人配置される事になった。
これで終わりなら良いのだが……。
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次の日の夜。
ギリアンのベッドには彼の護衛の少女が裸で横たわっていた。
怒りの捌け口として乱暴に扱われ、気を失っている。
しかしそれでもギリアンの怒りは収まらなかった。
既に護衛やメイドの女を抱いたが、流石に飽きが来る。
だからこそ学校内で見つけた女を手に入れていたのだ、相手を罠にはめてでも。
それなのにレミリーナの護衛を逃したばかりか、戦利品まで奪われてしまった。
大衆の前であんな恥まで晒されて……。
それでも、だからこそ、あの少女は絶対に手に入れなければ。
この憤りはあの少女をもって埋める事で溜飲が下がるのだ。
しかしどうすれば……。
「大変な目に遭ったようですね、ギリアン様……人を介して聞いております」
「……誰だ」
いつの間にか男が部屋に居た。
黒いフードをかぶり、黒いスカーフで鼻や口を覆っている為、素顔は殆ど分からない。
「お前が例の侵入者の一味か」
「ええ、そうです。昨晩の一件で校内の警備が厳しくなっておりまして、今ここに居るのも結構な賭けなんですよ」
「それで、俺に何の用だ」
本来ならこの男は警備の連中に突き出すべきだろう。
だが、人知れずここまで来たのに、わざわざ「侵入者です」とあっさり答えてまで会話を続けている。
何かあるな。
それを確認してからでも遅くはないのではなかろうか。
「流石ギリアン様、理解が早くて助かります」
「世事は良い。今俺は機嫌が悪い、早くしろ」
「この本を、ギリアン様の助けとなる筈です」
そう言って男は陣の描かれた大きなメダルを差し出す。
「このメダルには大きな力が秘められています」
確かにこのメダルから力を感じる。
学校に害を成そうとする人物、明らかに怪しいメダル。
いや、だが、しかし、もし――。
僅かな迷いの後、ギリアンは男からメダルを受け取る。
「しかし、そのメダルから力を引き出すには少々準備が要ります。まず――」
ギリアンに手順を教える男はスカーフの下で笑う。
――何と容易い小僧だ、そんな都合よく力など手に入るものか。
――所詮は欲望と怒りにまみれた世間知らずのお坊ちゃんか。
この世間知らずのお坊ちゃんが意趣返しに良くも分からず禁呪に手を出す。
ここから出てくるヤツは強力だが、殆ど動くことなく半日もすれば帰っていく。
残るは全ての罪を被って死んだお坊ちゃん、そして数多の死体に混ざったエミリーナの死体だけだ。
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「クレイさん!クレイさん!今日は趣向を変えてこの服でいきましょう!」
「何ですかソレ、紐じゃないですか」
「民族衣装です!」
「紐ですよね?」
朝食後、時々あるリーナの「お着替え」の時間だ。
リーナの勧めてくる服はどれも「今のメイド服の方がマシだ」と思えるものばかりで、幾度かの押し問答を経てメイド服で通すのがお決まりだ。
お決まりなのだが……。
「さぁ!クレイさん!お願いします!」
今回のリーナは何というか、いつもの日々を取り戻そうと必死になっている、そんな気がする。
「お願い……します……クレイさん……」
「リーナ様……」
紐を握る手が、震えている。
「私は、一体どうすれば……」
「リーナ様、学校へ行くというなら傍に居ます。大勢の中に居るのが怖いのなら、この寮に居ても構いません。何があってもボクがリーナ様をお守りしますから、ご安心下さい」
涙を浮かべるリーナをそっと抱きしめる。
落ち着くまではこのままでいよう。
この紐みたいなのを着るつもりは無いが。
リーナが徐々に体重を預けてきた。
……少し預け過ぎでは?
いや、これは……。
食後の片づけをしていたレジーナが突然倒れた。
「レジーナさん!?リーナ様?……リーナ様!?」
「く……クレイ……さん……何……が……」
リーナの膝が落ち始め、慌てて支える。
まだ息はあるが、意識は無い。
窓の外にも倒れている人が見えた。
何かが起きている。
何者かが居る。
この寮のある区画から、ゾワリとする気配を感じる。
方向は……あっちか。
リーナとレジーナをベッドへ移動させ、クレイは気配のする方向へ走り出した。
総合評価が先日1000ポイントを超えました。
皆さま、有難うございます。




