迫る殺意
何とかネタが出てきました。
※少し台詞を追加しました。
ギリアンとの決闘を経て、校内でのクレイの評価はかなりのものとなっていた。
妙な姿で目立つのはクレイにとって喜ばしい事ではないが、リーナの事を快く思っていない学生を遠ざける事ができ、本来警戒すべき相手に気を回すことができるので、良しとする事にした。
確かにこの学校は身分の高い者が通うだけの事はあり、警備の人間も多数居る。
だがこの広大な敷地全てを見張るのは無理がある。
少なくとも、大なり小なりの騒ぎになる事を覚悟して、何処かに身を潜めて事を起こす事は可能だろう。
その者達が学校の警備に怖気づいて手を引いてくれるのなら、それに越した事はないのだが……。
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「すみませんクレイさん、こんな時間になるまで……」
今日はリーナが「せっかくこの学校に来たのだから」と学校で所蔵されている本をいくつか読み漁った。
地理関係以外の本の内容はクレイには理解できない内容だったが、とにかくリーナの学業が充実しているのならそれで良かった。
「リーナ様が得たい知識が得られたのなら、それで良いですよ」
今は校舎を出てレジーナの待つ寮へ向けて、脇に木々が生い茂る道を歩いている。
外は既に日が落ち始めており、ランタンが1つ、また1つと魔力由来の青白い光で道を照らしていった。
どういう仕組みなのだろうか……。
クレイにとってもこの学校生活は初めての事が多くあり、なかなかに楽しめるものとなっていた。
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そんな2人を木々に隠れつつ離れた所から監視している者達が居た。
黒いフードを被り、鼻と口を黒いスカーフで隠した男が2人。
どう見ても学校の職員には見えない。
「見えたか?」
「ああ、寮への道を2人、1人は目標のレミリーナ、もう1人は護衛の娘だ……周囲に他の人間は居ない」
「リッケ、頼むぞ」
リッケと呼ばれた男が弓を構え、矢を番える。
呪文を唱え、渦のような風が矢じりを包んでいく。
風をまとったこの矢は自在に軌道を変え、木の1本程度なら後ろに居る人間ごと容易く貫くことができる。
今の彼女らに隠れる余裕など与えるつもりはないが。
ーーまずは護衛から。
護衛の頭を射抜き、そのままレミリーナを貫く。
2人の死体が見つかり、騒ぎが起きる前に敷地を出る。
悪く思うなよ。
恨むならレミリーナの護衛を引き受けた自分を恨め。
矢が十分な風をまとったところで、放つ。
矢は木々を縫うように避け、クレイの頭へと吸い込まれる様に飛んでいく。
ーーコツンッ
「あだッ」
護衛の頭に当たった所で全てのエネルギーを使い果たした矢がポトリと落ちた。
護衛は小石でも当たったかの様にこめかみをさすっている。
「リッケ!お前何やってんだ!」
「手加減なんざやってねぇ!ちゃんと矢を放っ……」
ドドドド
と、轟音が物凄い速さで近づいていき、その轟音がリッケの上半身を吹き飛ばした。
その轟音は更に木を2〜3本なぎ倒した所で止まった。
「な……に……?」
矢だ。
木を抉る様に矢が刺さっている。
視線を戻すと、護衛が弓を構えていた。
ーーあれ程の威力を?矢で?
こんな事、想定外過ぎる。
逃げなければ……!
その思考は2度目の轟音が頭ごと吹き飛ばしていった。
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「よし、今回はちゃんと手加減できたぞ」
「く、クレイさん?」
リーナが恐る恐るクレイに話しかける。
何せ歩いていたらクレイの頭にコツンと何かが当たり、それが矢だと分かった時にはクレイがどこからともなく弓矢を取り出し、放った矢で木々を破壊し始めたのだ。
何事なのか理解する余裕も無かった。
「学校ではない者の襲撃です」
「襲撃……」
「もしやここにまで」と覚悟しつつも、心のどこかで「まさかここにまで」と思っていた危険が自分のすぐ近くまで迫り、牙を剥いてきた。
足元に転がっている矢がクレイではなく(何故彼女が無事なのか分からないが)、自分だったら……。
驚き、不安、恐怖。
様々な感情がリーナの背中にずしりとまとわりついていった。
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首都、雑多な家々の1つに男が1人、窓から夜空を眺めていた。
とうに日は落ち、満月が夜空の真ん中で煌々と輝いている。
ーーガラービとリッケが戻ってこない。
帰投の時間はとうに過ぎている。
男は椅子へ深く腰掛け、大きなため息をつき、天井を仰ぎ見る。
ーー失敗したか。
彼等が生きてるにせよ、死んだにせよ、侵入者が出たとなればレミリーナも学校も警戒を強めるだろう。
諦めるか?
いや、彼女が城に戻れば今以上のチャンスは巡ってこない。
あの方の王へ道を阻むものは少しでも排除しておきたい。
あの方もそう思っているはずだ。
レミリーナは必ず排除する。
もう外から攻めるのは難しいだろう。
ならば……内側から攻めさせれば良い。
失敗は許されない。
より確実な手を打たねば。
校内者達には気の毒だが、これもより良い国の未来を確実にする為。
ネタ出し頑張ります。
 




