ルガルトルガ学校
「が」の多い学校です。
ルガルトルガ学校。
同名の英雄が後世の為にと首都と隣り合う様に、広大な土地に建てたとされる由緒正しき学校。
話に聞いた程度で、こういった施設にはとんと縁がなかった。
さながらちょっとした町だ。
敷地内へ入り、一際大きな建物へと向かう。
リーナによるとこの建物が校舎……生徒達が学びを受ける建物だそうだ。
学校長という肩書の人物と挨拶を行う。
ちなみにクレイは挨拶の間勝手が分からず、リーナの後ろで直立不動の置物となっていた。
その次に学校長自らの学校中を案内をして貰い、終わる頃には夕方になっていた。
学校長と別れ、寮へと向かう。
「こちらが在学中の寮になります」
目の前には小さな家が一軒。
「寮……これが?この家は他の生徒も利用するんですよね?」
「この家を使うのは私達だけですよ」
周囲を見渡すと、同じ様な家がずらりと並んでいる。
ここの区画にある一軒一軒が……。
目眩がしてくる。
「さぁ、何はともあれ入りましょう」
リーナに促されて扉を開ける。
中には生活に必要な家具やら道具が一式揃っていた。
家の中にあるものは予めリーナが持ち込んだものらしい。
そのせいかやたらと高級感のあるものばかりだ。
壊したらどうしよう……。
「お帰りなさいませ、リーナ様、クレイ様」
「うわぁッ!」
メイドが居た。
い、いつの間に……。
「こちら私のメイド、レジーナです」
レジーナが会釈をする。
「あ、ええと、クレイです」
どうすれば良いのか分からず、とりあえず会釈を返す。
「寮内の事はレジーナが担当しますから、掃除や料理は安心して下さいね」
「あ、ありがとうございます……」
何と言ったら良いのか分からず感謝を述べてしまった。
「メイドも居るんですね……」
「生徒によっては寮内に数人のメイドを置くそうですよ?」
「なんと……」
リーナはこの高級感溢れる生活感に全く緊張していないようだが、リーナにとってこれは普通なのだろうか。
「授業を受けるのは明日からになりますので
、本日持ち込んだ荷物を積み込んで今日はゆっくりしょう」
レジーナの料理は非常に美味しく、温かい風呂があり、ベッドはフカフカだった。
今までの生活と離れ過ぎているーーお、落ち着かない……!
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次の日。
レジーナが作った朝食を済ませ登校の準備を始める。
「リーナ様、こちらに」
「ありがとう、レジーナ」
レジーナがリーナに綺麗に畳まれた制服を渡す。
「ではボクはここで待っていますね」
建前上クレイも生徒と言う事にはなっているが、あくまで建前上の話だ。
付き添うだけで実際に授業を受けるのはリーナのみ。
その為、クレイに制服の着用義務は無い。
学校長の案内の際、すれ違う生徒の護衛達の殆どは制服を着ていなかった。
「クレイさんの分もありますよ?私の身辺警護、学校生活に相応しい服をご用意しました!」
レジーナから服を渡される。
どうやら、制服ではないようだ。
畳まれた服を広げる。
「……何ですかこれ?」
「クレイさんのメイド服です!」
「メイド……」
袖が無い。
スカートが短い。
首元、特に前の部分が大きく開いている。
目の前に居るメイドとかなりデザインが違うのだが……。
「クレイさんはこれに着替えてください、さぁ!さぁさぁさぁさぁ!」
リーナが血走った目でこの変態じみたメイド服へ着替える事を迫る。
この人、王族ですよね?
……高級奴隷を演じた時の服に比べればずっとマシだ。
そう思って着替える事にした。
「ンギャァァッ!可愛過ぎです!クレイさん!可愛過ぎです!」
制服に着替えたリーナがメイド服らしきものに着替えたクレイの周囲をグルグル回りながら発狂したように喜んでいる。
何故だろうか、ゴイスの事を思い出す。
「クレイ様、よくお似合いです」
「せめて目線を合わせて言って下さいレジーナさん」
「……」
「遠い異国の地には目に映る風景を"シャシン"という絵画へと移し取る"かめら"なる道具が発明されたと聞きます!嗚呼!今!正に!それが欲しい!欲しいです!」
これが2ヶ月続くのか……。
クレイはしばらくメイド服生活となります。




