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神剣は気ままに暮らしたい(仮称)  作者: 一二三 四五六
間の話・高級奴隷のクレイ編
28/72

クレイと新しい依頼

第1部と第2部の間、1.5部。

短めのお話の予定です。


名前を変更しました。

まるで小さな劇場と言ったような暗い屋内。

観客席に座る人々はいかにも身分が高い事が分かる服を着ているが、仮面を付けている為、よほど体格に特徴が無ければ個人を判別することはできなかった。


明るく照らされた壇上には同じく仮面を付けた男が中央から少し外れたところに立っていた。


「さあご来場の皆様!今回目玉の奴隷の登場でございます!」


壇上の男が演技のような身振りで両腕を広げ、観客に向かって大声を上げる。

壇上の奥、暗がりからゆっくりと奴隷が最も照らされた壇上中央へ歩いていく。


両腕両足に(かせ)を付けた少女。

褐色の肌、銀の髪、黄色の瞳、まるで人形のように美しい伏目がちの顔。

服は綺麗な生地を使っていたが、背中は丸見えで、前もこれ以上左右の布幅を減らせば見えてしまうほどで、スカートの丈も歩き方を気を付けなければ見えてしまう。

おまけに胸の下辺りから腹部の下辺りにかけて布がひし形に切り取られており、へそが見えてしまっている。

ワンピースと言うにはあまりも無理がある、わざとらしい服装だった。


褐色の少女が壇上の中央で一礼、ゆっくりと時計回りに一回転し、見姿をくまなく観客に見せた。

観客から感嘆の声が次々に漏れる。


「珍しい異国の少女!非常に若く、そして宝石と呼んでも相違無いこの美しさ!名はイラーラ!」


壇上の男が一歩前へ出て続ける。


「さあ!この奴隷の競りの開始です!」


観客から次々と金額が提示され、吊り上がっていく。

自分が競り落とされようとする中、イラーラと紹介されたクレイが天井を仰ぎ見る。


(はぁ……この依頼、ホントに大丈夫なのかな……何で引き受けちゃったんだろ……)


※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※


――3日前。


依頼の報告をしたクレイに受付嬢のニナが慎重な面持ちで呼び止めた。


「クレイちゃん、お願いしたい事があるのですが……」

「依頼ですか?」

「ええ、クレイちゃんは"高級奴隷"はご存知ですか?」

「縁遠い話なので実際に見た事はありませんが、聞いた事がある程度には」


悲しい事だが、この国では決まり事がある程度決まっているものの、奴隷の所有が合法となっている。

奴隷と言っても様々だ。

その中でも、特に優れた何かを持つ奴隷が極稀だが存在する。

知識に優れる者、特殊な技能を持つ者、身体能力が極めて優れている者、姿が美しい者……。

そういった奴隷達を「高級奴隷」と呼び、主に貴族向けとして取引されている。


「クレイちゃんをその高級奴隷として競りに出品したいんです」

「帰ります」

「あ~~~~!言い方!言い方が悪かったです!話を!話を最後まで聞いてくださ~~い!」


(きびす)を返したクレイをニナが泣きついて引き留める。


「……それで、何ですか?」

「え、ええとですね……エライ家という貴族に"ゴイス"という方がおりまして、まぁどこにでも居る貴族なのですが……彼には"目麗しい高級奴隷の少女の収集"という変わった趣味がありまして、出品された高級奴隷の少女は全てゴイスが競り落としているそうです……その……高級奴隷の少女と毎晩……まぐわいと言うか……調教と言うか……」


ニナがモゴモゴと説明に詰まり始めた。

これもまた悲しい事だが、奴隷に対して()()()()()()をするのは……微妙なところだが、罪ではない。


「そのゴイス=エライという人の事は分かりました、その人が一体何ですか?」

「ゴイスにクレイちゃんを競り落としてもらいます」

「帰ります。それと次から別の受付嬢の方に依頼を処理してもらいますね、二度と話しかけないで下さい」

「あ゛~~~~~ッ!まだ話が!話には続きがあるんです!最後まで!最後まで聞いてください!」


再びニナがクレイに泣きついて引き留める。

大きくため息をつき、クレイが元の位置に戻る。


「……それで?」

「うぅ……怒ってる……でも怒ってるクレイちゃんも可愛い……」

「ニナさん?」

「あぁ、ごめんなさい、それでゴイスには趣味とは別に"ある噂"がありまして……」

「噂?」

「一部の高級奴隷の少女達に非正規の隷属の首輪を使用している……という噂です」

「隷属の首輪……」

「貴族であっても非正規の隷属の首輪の所持は罪となります、噂が本当なら、ですが」


非正規の隷属の首輪……バルガスも持っていたあの首輪だ。


「依頼主は王国の騎士団の長です。既に非正規の首輪をゴイスが間違いなく所持しているという情報は手に入っており、ゴイスの館を調べれば物的証拠が必ず見つかるとの事です」

「じゃあ騎士団でゴイスの館を調べれば良いじゃないですか」

「相手は貴族です、非正規の隷属の首輪所持くらいでは……"そういった情報を掴んだ"程度で館に立ち入る事はできません、物的証拠が必要です、例えば"所有者の名が刻まれた非正規の隷属の首輪"とかです」

「だけどその首輪を付けた高級奴隷は館の中、つまり館に立ち入る為に必要な物的証拠が館の中にある……と」

「そういう事です、クレイちゃんは高級奴隷としてゴイスの館に入り、ゴイスの名を刻まれた非正規の隷属の首輪を証拠として回収して下さい、騎士団が正式に立ち入りゴイスを捕らえる事ができれば非正規の隷属の首輪の売買ルートを聞き出す事も可能なハズです」


『紅の爪』の面々は取り調べを受ける前に全員死亡していまい、誰から首輪を買ったのかを聞き出すことができなかった。

今回、ゴイスを生きたまま捕らえる事ができれば……。


「何かあっても(物理的に)対処できる実力があり、ゴイスが飛びつく程の少女といったらクレイちゃんしか居なくて……ある意味危険な依頼ですが……どうでしょうか?」

かなり無理がある流れですがご容赦下さい。

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