クレイ対アレイヤ
評価、感想、ありがとうございます。
――クレイがギルド内でバルガスの誘いを断った後。
今はアレイヤとテーブルを挟んで会話をしながら甘味を楽しんでいる。
会話の内容は最近の依頼の話や、噂話など様々だ。
フォークに刺し、口に運ぶ。
(ん~美味しい!)
リンゴの様に大きなオバケイチゴを切り分け、甘いシロップをかけたものだ。
クルトだった頃は何となく自分の中で食べ辛い雰囲気があったのだが、クレイとなった今なら心置きなく食べる事ができる。
この身体に食事が必要なのかは分からないが、習慣で食事をしていた中で特に害は無かったので、今もそれが続いている……と言った感じだ。
フォークに刺してもう一口。
アレイヤとは懐かれてしまった、と言った感じだ。
ちょいちょいギルドに顔を出し、クレイを見つければとりあえず抱き着いて頬擦りをし、近況を聞いてきたり試合を申し込んだりと言った感じだ。
今のところアレイヤと試合をした事は無いのだが。
ちなみにアレイヤが食べているのはサイコロ状に切られたイノシシ肉を香辛料で焼いたものだ。
フォークに刺して……
――カチンッ
刺さらなかった。
アレイヤがしたり顔でイチゴが刺さったフォークを見せびらかしてくる。
「あーーーーッ!」
せっかくのオバケイチゴが!
たまには奮発しようと背伸びして注文したのに!
――パクッ
アレイヤがイチゴを食べた。
「あ゛ーーーーッ!」
食べた!
この人食べたよ!
他人の食べ物食べた!
「へっへっへ、甘いねぇ、このイチゴ並みに甘いねぇ」
そうか、食事に誘ったのはこういった事か。
ならば……
切り分けられたイノシシ肉を素早く奪い、食べる。
「……む」
クレイが次に取る行動が想定したが思っていたよりも速く、反応できなかった。
アレイヤがフォークを構える、見る人が見れば「フォークからオーラが出ていた」と言いそうだ。
ヒュッ、と風を切りながらアレイヤのフォークがイチゴに迫る。
それをクレイはフォークで触れて、軌道を変える。
アレイヤのフォークが空を切る。
クレイがイノシシ肉を目掛けてフォークを伸ばし、アレイヤが下へ弾く。
クレイのフォークがテーブルに刺さり、隙を生む。
再びクレイのイチゴへアレイヤのフォークが迫る。
「――ッ!」
キンッと音を立てて、アレイヤのフォークを斜め上へ弾く。
今のは危なかった。
「……」
「……」
互いにフォークを伸ばし、弾く。
そのたびに「キンッ」という音が鳴り、徐々にその間隔が短くなっていく。
「え?何あれ……」
「手元が速すぎて全然見えねぇ!」
「アレイヤ様と……クレイちゃん?」
周囲から見れば、食事風景から遠く離れた動きだ。
フォークの応酬はしばらく続く事となった。
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食事(?)が終わり、クレイが席を立ち、テーブルにはアレイヤだけが残っている。
「ちょっと強引だったかな?」
いつまでも手合わせできなかったのだ。
これくらいの事は許してほしい。
「それにしても……あの男の目……」
あの目には見覚えがある。
いつだっただろうか、「親睦を深める」という名目で自分を手籠めにしようとした貴族のオッサンと似たような目をしていた。
あの時は鼻をへし折ったり指をへし折ったりしたせいで大変だったな。
あの男もクレイに似たことをするつもりなのだろう。
「まぁ、キミなら大丈夫だと思うけど、一応ね」
そう呟くとアレイヤは席を立った。
この次の話が問題の回になる予定です。
まだスケベを入れるのか、もし入れるとしてどの程度入れるのかどうか迷っております。




