クレイ対『紅の爪』①
某ソシャゲの放送を観ながら書きました。
街の外。
森や林と言う程ではない中にある道。
人々が往来することでできた道だが、周囲に人は居ない。
目的はいつもの依頼、いつもの採集だ。
既に依頼に必要な物を採取し、街へと帰る所だ。
なにせ9等級、ほぼ採集依頼なのだ。
ちゃんとこなしていかないと生活ができない。
ニナが言うには「もうすぐ8等級になれますよ!」との事らしいのだが……。
「ちょっと待ってもらおうか」
前方の脇にある岩からバルガスが道をふさぐ様に出てきた。
後ろから足音、振り返ると木の陰からラルミアとリリタが現れた。
「勧誘なら以前断ったけど?」
「いや、俺たちのパーティーに入ってもらう、これが何か分かるか?」
バルガスがポーチから首輪を取り出す。
「隷属の首輪……」
――隷属の首輪、この首輪を付けられた者は首輪の持ち主の命令には逆らえない。
刑罰として労働を科せられた囚人の内、労働の放棄や脱走が考えられる、あるいは過去にそういった事がある囚人に対して、それを防ぐための首輪。
だがその首輪は厳重に管理されている、許可無く所持することは重罪だ。
しかし、需要あれば供給あり。
非正規の隷属の首輪が出回っている、当然所持していれば正規品以上の罪に問われる。
正規の隷属の首輪の命令できる範囲は科せられた労働の範囲に限られている。
非正規の隷属の首輪にはそれがない。
どんな命令でもすることができる、どんな命令でも逆らう事が出来ない。
バルガスが持っているのは非正規の隷属の首輪だ。
「そうだ、お前が悪いんだぜ?あの時ちゃんと誘いを受けていれば優しくできたのによぉ……」
「後ろの二人はこれで良いんですか?」」
「1等級に……なるんです!」
「アタシ達は止まりたくないのよ、アンタの事は可哀想だとは思うけどね」
本気の様だ。
「その首輪、持っているだけで罪ですよ」
「コレを付けたお前が?ご主人様が誰かにそれを言う事を許可するとでも思うのか?」
「大人しく首輪を付けさせると」
――ヒュンッ!
目の前を何かが風を切り、横切った。
木に刺さっている――矢だ、ルタールが茂みから矢を放ったのだ。
「ほらよ!」
「!」
矢に気を取られた隙を突かれ、何かを顔に投げつけられた。
「うわッ!」
その何かが破裂し、粉末が周囲を覆う。
やった、やったぞ!
粉末を避け、口を覆いながら下がるバルガスは勝利を確信し、ニタリと笑った。
この粉末は麻痺毒だ。
この濃度ならひと呼吸で全身に痺れが襲い、もうひと呼吸で意識が朦朧となり立つことすらままならなくなる。
後は粉末が消えてからゆっくりと隷属の首輪を付ければいい。
――俺の誘いを断った罰だ、上下関係というモノをしっかりと教え込んでやる。
バルガスの脳裏には、隷属の首輪で抵抗できず、全裸でベッドの上で組み伏せられ、泣きじゃくりながら自分にありとあらゆる凌辱を受けながら許し請い、忠誠を誓うクレイの姿が映っていた。
――ああ、今から夜が楽しみだ。
これから毎日のように可愛がってやるからな。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「……」
「ゲホッ!何コレ?」
「……」
「うわッ!口の中が粉っぽい、ペッ!ペッ!」
「何故だ!?何でピンピンしてんだよ!?」
粉末を吸い込んだハズだ!
効果は確かのハズだ!
何故だ!?
「リリタ!」
「麻痺付与!」
……何も起こらない。
「え?麻痺付与!麻痺付与!」
やはり何も起こらない。
「睡眠付与!毒付与!」
クレイの体に異常は出ない。
「リリタ!どうした!」
「ちゃんと状態異常の魔法は発動してる!ちゃんと当たってる!でも訓練所の的に当ててるみたいに全然手ごたえが無いの!どうして!?」
――新たに経験値を得た今なら分かる。
この身体は神々の武器、神剣なのだ。
剣に麻痺や毒の類が効くワケが無い。
どうやらそういったもので体の自由を奪い、隷属の首輪を付ける算段だったらしい。
「クソッ!こうなりゃ仕方無ェ!死なない程度に痛めつけるぞ!」
バルガスとラルミアが剣を抜き、リリタが構え、ルタールが弓をつがえた。
皆さま、良いお年を。




