神剣と新しい身体
宜しくお願いします。
剣の名前を検索したら、モビってる某スーツの名前だった様なので、少し変えました。
――かつて、この世界を創造し守護する神達と仇なす神達との間に戦争があった。
仇なす神達がどの様な存在だったのか、僅かに伝承が伝わっていた地域によって様々だ。
ある地域曰く、この世界の管理を巡って別れた神達だと。
またある地域曰く、邪悪に染まってしまった神達だと。
別の世界から攻め込んできた神だったとする伝承もある。
ともあれ、仇なす神々の力は凄まじく、守護する神達は一人また一人と倒れていった。
追い詰められた守護する神達は最後の手段に出た。
――神の力の統合。
神の力を、その存在ごとシステムとして一つの武器へ集約。
この数多の神を犠牲にした武器がどんな形だったのかも、伝承によって様々だった。
曰く、海をも裂く剣だった。
曰く、山をも貫く槍だった。
曰く、月をも穿つ弓だった。
守護する神達の長はこの武器を用いて、反撃に出る。
地域によって様々な様相見せる伝承だったが、この部分に関しては共通していた。
――「天変地異の如き戦」だと。
辛うじて勝利を得た守護する神達の長だったが、力を使い果たし、人知れず消滅した。
後の世界を地上に生きる者たちに託し……。
そして、神々の武器だけが残された。
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――真っ白な空間。
接地感が無い、浮いているのか?
どっちが上なのか下なのか分からない。
『新たな契約者を確認』
いつの間にか目の前に剣が浮いていた。
クルトにはその剣に見覚えがあった。
あれは……恐らくバルガスが自分の胸に刺した剣だろう。
「恐らく」としたのは、目の前の剣は新品のような輝きを放っていたからだ。
確か、胸に刺さった剣は鈍い色をしていた。
『契約者の生命力低下を確認』
頭に声が響く。
あの剣の声だろうか。
男性と思えば男性、女性だと思えば女性。
子供と思えば、大人だと思えば、老人だと思えば、そう聞こえる。
何とも不思議な声だ。
「生命力の低下…?それは僕の事なのか?」
『対処法を模索、あの時を繰り返してはならない』
「あの時?あの時って何だ?」
『提案……却下、提案……却下、提案……却下』
「ちょっと、聞いているのか?」
『生命力の更なる低下を確認』
「なぁ、ちょっと!?ヤバいのか!?」
『提案……………』
狂ったように『提案』と『却下』を繰り返していたと思えば、突然の長い沈黙。
余計に不安を煽ってくる。
『承認』
「承認って?何を?少しは答えてくれ!」
『融合、再構築を開始』
「だから一体何の…うわっ!?」
突然、体が剣に吸い込まれていく。
抵抗しようにも踏ん張る地面も無ければ、しがみつくものも無い。
『我々の名は"バルバクレイス"……血の契約は成った』
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「――ッ!ハァッ……!ハァッ……!」
とっさに上体を起こし、辺りを見渡す。
ダンジョンの最奥、破壊された罠、剣が置いてあった床。
僕が最後に見た光景だ。
『紅の爪』の奴らがクルトの荷物を漁ったのだろう、辺りに散乱している。
夢では無いようだ。
「ハァ……ハァ……」
……生きている?何故?
確かに僕は罠にかけられ右手がちぎれ、あちこちに穴が空き、心臓を剣で刺されたはず……。
胸に右手を添える。
指先に感触がある、右手がある。
胸に剣は……刺さっていない。刺された痕も無い様だ。
触れた指先を見ても血は付いていな――
自分の手はこんな形だったろうか。
指の形も、肌の色も違う。
自分の手だ、見間違えるハズがない。
この手は僕の手ではない。
それに、妙に視点が低い気がする。
違和感を覚えたクルトは、散乱した荷物からナイフを拾う。
安物だが、しっかりと手入れをしてある愛用のナイフだ。
鏡の様に磨かれた刀身で顔を映す。
長い銀色の髪、黄色い瞳、褐色の肌、幼さのある整った顔立ち……この見た目は、男というより――
「……まさかっ」
咄嗟に股間へ手を伸ばす。
「無い……」
生まれてから今まで付き添ってきたアレが無い。
「……女の子に……なっちゃった……」
書き溜めたものなので、次回はしばらくかかります。