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その頃の紅の爪の面々②

今回も紅の爪の人達には大変な目に遭ってもらいます。

メルボアから1日程歩いた距離、「ヘルホラン」と呼ばれる森。

森は少し迷いやすい為、この森を踏破すれば脱新米冒険者といったところだろうか。


『紅の爪』の面々はそのヘルホランの森を進んでいた。

この森自体に用事があるわけではないが、依頼を達成するにはこの森を抜ける必要があった。


近頃任務の成功率が悪い。

特に長距離移動を必要とする任務はここのところ一度も成功していない。


――このままでは1等級へ昇格どころか2等級の維持すら怪しい。


彼等は焦っていた。

何としてもこの任務を達成しなければならない。


普通なら朝に森へ入れば日が落ちる前には抜け出せる森だ。

だがもうこの森に入って2日経っている。


ヘルホランはここまで広い森だったのだろうか?

もしかすると自分達は違う森に居るのではないか?

ずっと同じ景色を見ている気がする、同じところをグルグルと回っているのではないか?


実際のところ『紅の爪』の面々は同じところをグルグルと回っていた。

もう遭難していると言っていい。

だが状況を認めて行動する者は居なかった。

2等級冒険者の我々が、この程度の森で迷うハズが無いのだから。


更に2日経った。

出発前に用意した食料に底が見え始めていた。

クルトが居なくなってからの任務失敗のパターンの一つが現れ始めている。

だがこれ以上『紅の爪』の評判を落とす訳にはいかない。

今は一食の量を減らして何とか凌いでいる。


今日も踏破は出来ず、今夜も森の中でたき火を囲みながら僅かな食料を食べるハメになった。


「ひもじい……」

「文句を言うなリリタ!俺だってこれじゃ足りないんだよ!」

「でもバルガス……このままじゃジリ貧よ?」

「ラルミア!んな事ぁ分かってる!じゃあまた任務を諦めろってのか!?」

「それは……アタシだってそれは嫌だけど……」


そう言ってラルミアは何も言わなくなった。


ルタールは何も言わずバルガスを見ている。

バルガスにはその視線が恨みがましい様に見えた。


(チッ……俺のせいだとでも言いたいのかよ……!)


何か食えるものはないのか。

周囲を見渡したバルガスの目に――暗がりで良く見えないが――木に(みの)る、妙に捻じれた独特の色をした果物が映った。


――あぁ、あの果物は知っている。

最近貴族連中に人気だという……確か、そう確か()()()()()()ってヤツじゃないか。

クルトが「食べない方が良い」と言っていたが、何だ、食えるんじゃないか。

あの野郎、適当な事言いやがって。

貴族が食う果実だ、さぞかし美味いに違いない。

しかも、今夜の食事を満足のいくものにするには十分な量がある。


やったぞ、俺達はツイている。

ラセンリンゴは会話に出てきてそれっきりの予定だったのですが、まさかここまで出番があるとは思いませんでした。

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