貴族の子ルニスと緊急事態④
戦闘シーンです。
……難しいですね。
オークだったものが「グチャリ」と音を立てて捨てられた。
どうやら標的をこちらに変えたようだ。
退いてはいけない、下手に下がって触手モンスターが前進でもしたら、ルニスが触手の射程内に入ってしまう。
オークですらあの有様だ、ルニスが捕まったらひとたまりもない。
脚を狙って触手が横薙ぎで迫ってくる。
「よっ」
体を捻りながら跳び、触手を避け、すれ違いざまに触手を斬る。
触手には触れてはいけない、ギリギリではなく大きく避けるよう心掛ける。
振り下ろされた触手を、突き刺すように伸びる触手を、地面から飛び出してくる触手を、様々な方向から様々な手段で襲ってくる触手を躱し、斬る。
「もう少し!」
狙うは本体、元を断たなければ。
ミノタウロスと戦った時にも感じたが「クレイ」となってから身体の反応速度がかなり上がっている。
「クルト」だったらこうはいかないだろう。
触手達もだいぶ短くなった。
20本近くあった触手も、無傷なのは片手で数えられる程度までに減っている。
踏み込んだ右足近くの地面から触手が顔に向けて飛び出してきた。
「うわっと!」
咄嗟に身を反らし、回避、そして斬る。
「危ない危ない、集中集中」
2本の触手が上から迫る。
このモンスターに「焦り」というものがあるのか分からないが、かなり大振りな攻撃だ。
クレイはこれを隙と見て、一気に距離を詰める。
触手モンスターはこれに対応しようと更に触手を振り下ろすが、地面を叩くだけで、当たらない。
――跳躍。
触手モンスターは迎撃しようとするが、全ての触手を振り下ろしに使っていまい、間に合わない。
「せやッ!」
神剣の刃が本体の上から下まで通り抜ける。
間を置いて本体が左右に割れ、デロリと中身が流れ出る。
その中身には「オークだったもの」も含まれていた。
「うわぁ……」
見ていて気持ちの良いものでは無い。
とにかく、触手モンスターの驚異は去った。
「ルニス君、ここでの事は秘密にしてもらえるかな?」
ニアとの約束もある、しかしそれよりもこの触手モンスターの事を話せば神剣の事を隠し通すのは難しいだろう。
神剣の事を知られてしまえば面倒な事になる、そんな気がしてならない。
「はい!勿論です!クレイさんの名誉の為に、この事は誰にも話しません!もしもの時は……ぼ、僕がセキニンを取ります!」
「いや、そこまでしなくても……」
――クレイが自分の格好に気付き、慌てて予備の服に着替えるのはもう少し後の話である。
もっとネタをストックしておかないと……。




