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捨てられた案内役とハズレの剣

自分が読み易い事を重視したので、通常の文法とは違う事をご了承下さい。


気が付いたら長めな内容になってしまった……。

――2等級パーティー『紅の爪』。

リーダーの剣士バルガス。

同じく剣士ラルミア。

弓使いのルタール。

魔法使いのリリタ。


そして案内役のクルト。

それが彼のポジションだった。


『紅の爪』が駆け出しの9等級の頃から支えてきた。

地図を読み、目的地までの『紅の爪』の彼等を導くのがクルトの仕事だ。

他には野営の際に料理をしたり、戦闘には不要な荷物を代わりに持ったりなど……。

実際のところは案内役というより雑用と言ったほうが良いかもしれない。

戦闘での負担を軽くする為に様々な情報を仕入れたり、最低限の自衛が出来るように自身を鍛えたりなどもしてきた。


しかし、ダンジョンへ潜る前日の野営、食料を調達して戻る際に彼等の話を聞いてしまった。

要約するとこうだ。


『新米だった頃ならまだしも場数を踏んだ俺達は地図を読んだり料理や野営くらい出来る。今やクルトは俺達の功績と報酬をただ受け取るだけ。今更クルトに頼るような事は無い。しかし一方的にクルトを追い出せば周りからの心象が良くない。自分から脱退を切り出せば良いが、そうでないのならいっそ不慮の事故で死んでくれないだろうか』


当初から自分に不満を抱えていたのは分かっていた。

だからこそ、戦闘では役に立てない代わりに彼等を影から支える人になろうと日々頑張ってきた。

だが『紅の爪』からの評価は思っていた以上に悪かったようだ。


ダンジョンに入った後、彼等がわざと陣形に隙間を作り、クルトにモンスターの攻撃が来るように時折仕向けてきた。

今までならそんな事そうあるものではなかった。

自衛の訓練もあり何とか対応していたが、ダンジョンの奥へ進む程彼等から向けられる視線が冷たくなっていくのを感じ、昨晩の会話が本気である事を実感させられた。


そういった出来事がある内に、ダンジョン最下層に到達した頃には体のあちこちに傷ができていた。

ダンジョンの奥深くへ進む程モンスターは強くなる。

最初の内は何とかクルト自身でも対応できていたが、流石に相手がオークやらミノタウロスとなれば流石に厳しい。

よく生きていたな、とクルトは自身の無事を噛み締めていた。


ダンジョン最奥に到達すると、そこには剣が一本横たわっていた。


「どう思う?」


バルガスが周囲を見渡してそう言った。


「あまりにも殺風景過ぎる。罠がありそうだ」

「やはりそうか」


ルタールがそれに応え、バルガスも同意した。


「クルト、お前に預けた荷物に罠探知の札がある、出してくれ」


その言葉にクルトは疑問を抱いた。

…「罠探知の札」なんて預かっただろうか?

そもそも「罠探知の札」という名を初めて聞いた。

そう思いつつも荷を下ろして探る。


「あぁ、そうだった、罠探知の札は……」


バルガスがクルトの胸ぐらを掴み――


「うぐッ……何を……!?」

「お前だ」


――投げ飛ばした。

宙を舞い、回転しているクルトの視界の中で、何かが、光った。

激痛、そして地面に落ちた。


「ぐッ……あッ……がッ……」


地面に激突した痛みより体のあちこちに激痛が――

右手が……無い。

千切れた右手首から、そして体中から血がとめどなく流れていく。


「おやおや、駄目じゃないかクルトぉ、罠があるのに前に出ちゃあ」


バルガスのあざ笑ったような声が聞こえた。

しかしクルトにはその声に反論する余裕は無い。

確かポーチにポーションがあったはず、低級だが止血くらいはできるはずだ。


「ぐッ……」


焦りと利き手が無い事で上手く掴めず、ポーションがコツンと音を立てて滑り落ちた。

ポーションはあの1つだけ……震える左手を伸ばしたその時――


バリンッ


ポーションが踏み潰された。

踏みつぶした脚をたどる様に視線を上げると、ラルミアと目線が合った。


「おやおや、ごめんごめん、慌てて駈け寄ったらうっかりポーションを踏み潰しちゃったわ」


彼女は笑っていた。

冒険者が持ち歩くポーションの瓶は不用意に割れない様、頑丈に作られている。

うっかり踏んた程度で割れるような物ではない――つまり、彼女はわざと割れるように踏んだのだ。


「おい、ラルミア、罠の位置は――ハハハッ、()()()()()のお蔭で分かってルタールとリリアで破壊済みだ、早く来い」

「りょーかーい」


バルガスに呼ばれたラルミアはクルトを跨いで駆け足で行ってしまった。


何が『ここまでやってきた(よしみ)だ、このダンジョンまでは付き合おう』だ!

何が『このダンジョンが終わったら自分から脱退を切り出そう』だ!

僕はすぐに逃げ出すべきだったんだ!

あの夜の会話を聞いてしまった時に!


バルガスが安置されていた剣を手に取る。


「さて、この剣はどんな力を持っているかな」


鑑定の羊皮紙の上に剣を置くと羊皮紙の表面を光点が走り、文字を刻んでいく。


「おぉ、終わったか……どれどれ……ハァ!?『不壊』だけだァ!?ただ壊れないだけの剣に用はないんだよ!クソッ!」

「こういうこともある、仕方ないさ」

「そうだよ、気持ち切り替えていこうよ」


ルタールとラルミアがフォローを入れる。

今更ではあるが『紅の爪』に自分の居場所は無かったのだとクルトは思い知らされる。


「それで……この剣はどうしますか?」

「そうだな……売ってしまうのも良いか……」


リリタの質問にバルガスが思案する。


「あぁ、使い道を思いついたぜ」


バルガスが僕の方へやってきた。


「クルト、今まで俺達『紅の爪』の為に良く頑張ってくれた……ホント感謝してるんだぜ?ククク」

「フゥッ……グフッ……」


バルガスが形だけの感謝を述べながらポンポンとクルトの肩を叩く。

血が足りなくなってきたのだろうか、クルトにはもう喋る余裕も無い。


「今まで頑張ってくれたお前の為に退職金を貰って欲しい、な?欲しいだろ?」

「ッ……」


バルガスが再びクルトの胸倉を掴む。


「だからよ、この剣、お前にやるわ」


衝撃。

一瞬遅れてその衝撃が自分の胸に剣が刺さった事によるものであるとクルトは気付いた。


「ガッ……ハッ……」


全身から力が抜けていく。

もう指一本動かすこともできない。

バルガスが手を離し、クルトは横向きに倒れ込む。


「じゃあな、預けていた荷物と使えそうなお前の荷物、有り難く頂いてやるよ」


荷物を漁る音、その後、遠ざかっていく複数の足音。

血は止めどなく流れていき、地面をを赤く染めていく。

流石に分かる、これはもう助からない。

視界も影響が出てきたのか、胸に刺さった剣が()()()()()()()()

その白は徐々に広がっていき、やがてクルトの視界を白で埋め尽くした。


――ああ、これが死ぬ……という事か。

『紅い爪』のメンバーの描写が少ない、さてどうしましょう。

必要に応じて書き換えを行うかもしれません。

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