5 少年の村での日々
次の日の朝、勇者たちと門番の少年は再会の約束をして別れた。勇者たちは魔王の居城への旅を続け、門番の少年は村へと戻った。門番の少年の村での日々がまた始まった。
春が来ていた。畑起こしの季節だった。村人びとは鍬を片手に畑へと出かけて行く。父親を失った少女も母親と共に畑へ朝早く出かけ、日が沈むまで鍬を振り続けた。
門番の少年は、父親を失った少女に「畑、手伝うよ」と言った。「ありがとう」と少女は苦々しく笑った。少女の手はマメだらけであった。少女とその母親の畑の耕作は遅れていた。農耕暦による種まきの時期が迫っていた。魔族が村の家畜たちを残らず食ったのだ。犂を馬や牛に引かせて畑を耕すことができない。村の農地全てを人力で耕さなければならなかった。他の村人も、自分の畑を耕すので精一杯であった。
門番の少年は毎日、村の誰よりも早く起きた。太陽の昇らぬうちに森へと行き、魔族が侵入した形跡はないか、草木一本一本を丹念に調べて回った。村の周囲まで調べ上げたあとは、東雲が明るくなるまで、剣を素振る。そして少女と共に畑に行った。
門番の少年はときおり、はぐれ魔族と戦った。勇者たちから逃れて散り散りとなった魔族だった。門番の少年は、はぐれ魔族を一歩も村の中には入れなかった。はぐれ魔族が現れる。それは、勇者たちが一歩、また一歩と魔王の居城へと近づいている証拠であった。
畑に種が蒔かれた。門番の少年は、畑から種たちが芽吹くその横で剣を振った。太陽の照りつける暑い夏。雨を待ちながら門番の少年は森を見回り、そして剣を振った。剣を振るたびに少年の汗が輝いていた。秋が来た。黄金色に輝く垂穂が村を囲んでいる。喜びの歌を歌いながら村人たちは敏鎌で小麦を収穫している。