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3 同行の願い

 勇者一行は、すぐに村を発つとのことだった。村長が、今晩は村に留まってください、(うたげ)を設けさせてくださいと申し出たが、それを勇者は固辞した。まだ太陽が昇っているうちに、少しでも魔王の居城に近づくのが勇者の意志だった。


 勇者達は見送られながら、村の境界を越えた。耕される春を待ち、眠っている畑の横の畦道あぜみちを勇者たちは通り過ぎていく。


 畑から未開拓の森へと変わる場所。そこに門番の少年が立っていた。


「勇者様、どうか仲間にしてください」


 勇者は首を横に振った。しかし、それで諦める門番の少年ではなかった。勇者の乗っている馬の前に立ちはだかり、仲間にしてくださると言うまで退きません、と言った。門番の少年の目には堅い決意が宿っていた。


 それでも勇者は首を縦には降らず、ただ黙って少年を見つめていた。


 ため息を吐き、馬を降りたのは剣聖だった。剣聖は少年の腰に差された剣を見た。


「おい坊主。お前は剣が使えるのか?」


「僕は村の門番です。村で一番の剣の使い手です」と少年は言った。その言葉は嘘ではなかった。村一番の剣の使い手だからこそ、村の門を任され、盗賊などから村を守ってきたのだ。聖女はその少年の言葉を聞くと、目を閉じて、少年が困難に立ち向かっていけるようにと、神への祈りをはじめた。


「そうか。じゃあ、俺に勝てたら、仲間を代わってやるよ」と剣聖は言った。少年は剣を構えた。少年の剣は、王都で売れ残った剣を、行商人が村に来て、捨て値で売ったものであった。剣聖の鞘の中で、地上に落ちた星から造られた伝説の剣がその時を待っていた。


「いくぜ」と剣聖が言うと同時に、少年の剣が真ん中から斬れた。剣の先端部分が地面に落ちてから、剣が斬られたのだと門番の少年は気付いた。


「剣を抜き、近づき、剣を振る。その後、元の位置に戻り、剣を鞘に収めた。どれか一つでも俺の動きが見えたか?」


 何をしたのか全く、門番の少年には見えなかった。瞬きをする一瞬よりも刹那に、その動作すべてが行われていたのだ。門番の少年は首を横に振った。


「そういうことだ。悪いな」と剣聖は言った。門番の少年はぐっと奥歯を噛みしめ、そして再び口を開いた。


「荷物持ちでも、雑用でも何でもします。どうか仲間に入れてください。どうしても、魔族に、魔王に復讐をしたいんです」と門番の少年は言った。


「こいつの説得は俺には無理だな」と剣聖は両手を上げ、勇者へと視線をやった。説得は任せた、という意味であろう。


「この森を入って水場を見つけたらそこで野宿をするつもりだ。そこまでだったら同行を許そう」と勇者は言う。「ありがとうございます」と門番の少年は深々と頭を下げた。

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