episode4 屋上
放課後。俺は、校舎の屋上に来ていた。前もこんなシチュエーションあったな。あの時は、相手の方が先に来ていたが。
5分くらい待って藤木さんがやってきた。
「山本くんなら、来てくれると思ってたよ。」
「まぁ、そんなに急ぐ用事もないし。」
「そう。私ね、山本くんに相談したいことがあってね⋯⋯。」
「相談?俺に?」
「うん。私、や、山本くんのことが好きなのかな?」
え?これは、告白なのか違うのか?反応に困る。
「え?あ。し、知らないよ。それに俺、彼女いるし。」
「知ってるよ。隣のクラスの凛ちゃんでしょ?でも、初めて山本くん見た時は一目惚れしちゃって⋯⋯。さっきは、回りくどい言い方だったけど好きなの!別に、付き合ってとかじゃなくて。この気持ちを伝えておかなくちゃって思っただけだから。」
「そうか。気持ちだけでもすごく嬉しい。これまで通り話しかけてよ。」
「うん。ありがとう。じゃあねっ。」
藤木さんは、顔を真っ赤にして階段を駆け下りて行った。
ふぅ
これを凛に知られたらどうなるだろうか⋯⋯。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【今日は、ちょっと遅くなるから駅前で待っててよ。】
こんなメールが一樹から送られてきた。今日は、日直だったって言ってたし先生に残らされてるのかな?
できるだけ長く一樹と歩いていたいし、彼女としても正門で待っていた方が、好感度上がるよね!
そう思い、正門でしばらく待っていた。ふと、上を見上げると校舎の屋上に一樹がフェンスにも垂れているのが見えた。
「あんな所で何してるんだろう。」
気になった私は、屋上まで行ってみることにした。
屋上の扉の前に来た時に、女の子の声がした。扉の隙間から覗いてみると、隣のクラスの藤木さんだ。
まさかとは思っていたが、これは告白なのだろうか。
「私、や、山本くんのことが好きなのかな?」
その言葉を聞いた私は、怖くなって階段を駆け下り、駅まで走って帰った。何も考えないように。
自分の部屋に着いて、ベッド上に座り込む。
ポタ。ポタ。
太ももの上に、涙が零れる。
なんで私、泣いてるんだろう⋯⋯。混乱していて頭が上手く回らない。
なんで逃げたの?
なんで飛び出して行かなかったの?
誰よりも、一樹が好きなはずなのに⋯⋯。
一樹は私の事、本当に好きなのだろうか。藤木さんと付き合ってしまったらどうしよう。
色々考えるうちに、顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
ブー。ブーッ。
携帯電話がバイブレーションする。
【駅に居なかったけど大丈夫?】
私は、それに返信することはなかった。