episode3 付箋
高校に入学して1週間。俺は、だいぶクラスにも馴染むことが出来た。凛はというと、クラス1の美人で有名人になっているらしい。それを自分で言ってきた。
俺たちは、昼休みは2人で過ごし仲良く昼食をとったり、話をしたりしていた。とても楽しい高校生活を送っている。
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ある日、自分の席でノートをまとめている所に、1人の女子がやってきた。この子は、藤木舞。明るい性格でとても可愛い。いいシャンプーを使っているのか、髪をなびかせる度にいい香りがする。そんな彼女はクラスの中では女子の中心的な存在だ。男子からは、女神としてしたわれている。
「ねぇ、山本くんっていつも真面目だよね~。」
グイッと顔を近づけて覗き込んで来る。
「お、おう。留年なんかしたくないからな。」
留年して、凛だけが先輩になるなんて御免だ。
「あー。私そこノート書けてないんだよね⋯⋯。後で貸してくれないかな?」
「別に、いいけど⋯⋯。」
「じゃあ、それ終わったら声かけてくれる?」
「分かった。」
ノートをまとめ終わり、藤木さんにノートを渡しに行く。
「藤木さん、ノート持ってきたよ。終わったら机の上に置いておいてくれる?」
「ありがとっ!山本くん字がきれいだね~!」
「そ、それほどでも⋯⋯。」
やっぱり、女子に褒められると照れる。
昼休みなので凛に会いに隣のクラスへ移動する。
「あ、一樹来たっ。」
じゃあねーとクラスの女子に手を振りながらこちらへ近づいてくる。
「一樹うちのクラスじゃあ有名人だよ~。」
「え!?そうなの?やっぱりこんな美人の彼氏だからかな~?」
「うん!そうみたいだよ!」
冗談で言ったつもりが本当に的中した。
「一樹もそんなこと言うようになったんだねっ。」
「いや、冗談で言ったらまさかの当たってたってやつ⋯⋯。」
「私が可愛いって言うのも冗談?」
「それは本当!」
こんなふうに毎日楽しく会話しながら過ごしている。
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昼食を食べ終わり、教室に戻ると自分の机にノートが帰ってきていた。ノートの表紙の上に、付箋が貼ってあり、《ありがとう 藤木舞》と書いてあった。こういう所、いい性格をしているんだなぁと思う。何となく、ノートのページをパラパラめくっていると付箋がもう1つ貼ってあるのを発見した。《山本くんが良かったら、今日の放課後に屋上に来てください。藤木舞》と書いてあった。
ふと、凛に告白された時のことを思い出す。まさか、告白ってことは無いだろう。俺は、隣のクラスでは凛と付き合っているということで有名らしいし、さすがに、藤木さんもこの情報は耳に入っているはずだ。
俺は、メールで凛に帰りが少し遅くなるから駅で待っていてとメールをして屋上に行くことにした。