episode2 入学式
凛と付き合い始めて、3週間ほどがすぎた。あれからというもの、2人で街に買い物に出かけたり、映画館に行ったりした。いわゆるデートってやつだ。
初デートの日は緊張するかと思ったが、お互いの家に遊びに行ったりしていたからか、普通に会話出来た。
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今日は、高校の入学式の日だ。もちろん恋人同士の俺たちは、駅で待ち合わせをして2人で登校する。電車の中でも、通学路でも2人で仲良く話しながら。まるで絵に書いたかのようなカップルって感じだ。
あっという間に、高校の正門に到着した。高校の教員が新入生や保護者を誘導していた。
「ご入学。おめでとうございます!新入生の方は、クラス表を確認してそれぞれの教室に移動してください!」
俺たちは、玄関の前に貼ってあるクラス表を見る。
俺は、1年3組。凛は、1年2組。
残念ながら、同じクラスにはなれなかったが、休憩時間もお昼ご飯も2人で食べれば問題ない。
ふと、凛の顔を覗くと。凄い青ざめていた。
「凛ちゃん?同じクラスになれなかったのはしょうがないよ。まさか、高校の先生たちが俺ら付き合ってるの知ってるわけないし。」
知っていたとしても、2人をくっつけてくれたかは不明だが。
「そ、そうだよね。休憩時間に会えば良いよね。うん。」
そして俺たちは、帰りの約束をして別々のクラスに移動した。
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無事、入学式が終わり俺たちは高校生になった。
「一樹!この後どこか行く?」
「待ってよ。その前に、入学式のプレートの前で2人で撮ろうよ。」
「そうだねっ」
撮影を終え、駅に向かう。手を繋いでいる男女もちらほら見かける。
「あの人たちも私みたいに、好きな人を追いかけてきたりしてるのかなっ?」
「さあね。俺は、凛ちゃんがそばに居ればいいから。」
こういう彼氏らしいセリフもだいぶ慣れてきて、逆に凛を照れされることも出来るようになってきた。
凛が喉が渇いたとうるさいので、駅前の喫茶店に入ることになった。
しかし、入学式が終わったからか学生で溢れかえっている。
「あ、あそこ空いてる!」
奇跡的に、2人席が空いていた。家族で席を探している時は、なんで2人席ばっかなんだよ。と思うが、こういう時のためにあるんだなぁ。
「あー、荷物重い。」
教室で配られた大量の教科書や問題集を持ち帰らなければ行けないため、かなり重い。こういう時は、彼氏が彼女のを持つべきなのだろうが、そんな余裕もない。
「え!?一樹?」
隣の席から、おばさんに声をかけられた。
「千恵子おばさん!なんでここに!?」
「何よ。若者に混じったら浮きますよとでも?」
千恵子おばさんとは、小さい頃から面倒を見てもらっていた近所のおばさんだ。
「なになに?彼女?可愛いわねぇ。」
「こ、こんにちは!」
「彼女だけど、母さんには内緒ね!千恵子おばさんお願いします!」
「分かってるわよっ。若者の気持ちがわからないおばさんなんて存在価値ないものね!」
別にそこまでは言っていないが、そういうことにしておこう。
「それじゃあ。私はここで帰るから、2人で楽しみなよ~。」
「千恵子さん?優しそうな人だね。一樹の近所の人?」
「そう。小さい頃よく預かってもらってたんだよ。」
「それじゃあ、私は一樹の家に一生預かってもらおうかな?」
「またそうやってからかう!」
「だって、戸惑ってる一樹可愛いんだもん!」
喫茶店での楽しいひと時を過ごして家路に着く。
このあと、新入生あるある。『名前書きが宿題』を2人でやった。