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8話 ACT3-2

 聞けばミティの双子の妹マティが《アルバの街》から東に歩いて30分ほどの水辺《汚水洞》に一人で向かってしまっていて、それを止めようとミティも向かっている最中とのことだった。


 ゴブリン4体に対して、いやむしろゴブリン1体ですら苦戦を強いられそうなミティが一人でモンスターとの戦いを繰り広げながら《汚水洞》までたどり着きマティと合流できるとは思えない。


「ミティ、もしよかったら俺も同行させてくれないか?」

 

 《汚水洞》がどのくらいのプレイヤーレベルを推奨としているのかはわからなかったが、ミティ一人で向かわせるよりは全然いいだろう。


「いえ、大丈夫です。申し訳ないので」


 そう返してくるミティの心情を考えると自分の都合に人を巻き込むのを申し訳ないと思っているのか自分一人でやり遂げたいと思っているのか分からないが、人の行為を素直に受け取るタイプではないのだろうと思ったシキはちょうどいい言い訳を考えてみる。


「実は俺も《汚水洞》に向かおうと思っていたところなんだよ。もしミティが一人で行動したいのであれば《汚水洞》に着くまででもいいんだ。俺、少し方向音痴でさ。もちろん妹さんのことも聞いてしまった以上は俺も心配だし。迷惑でなければ」


「い、いえ、そんな、迷惑だ。なんて逆に私がシキさんに迷惑かけてしまうのではないかと思ってしまっただけでして」


 なるほど、前者でも後者でもない足を引っ張ってしまうかもしれないからの遠慮パターンか。


「大丈夫大丈夫。さっきも言ったけど俺も初心者だからバトルは得意だけど方向音痴だからさ。お互いの苦手分野を補うって形で一緒に行動できたら助かるよ」


「それならば」とミティの了承をもらいフレンドとパーティー申請をする。

 フレンドとパーティーの申請が通ったところで【イベントクエスト:《汚水洞》でミティの妹マティを探索】のテロップがマイページに表示される。


「うお!!」


「どうしました?」


「ミティ、もしかしてNPC(ノンプレイヤーキャラクター)か?」


「NPCってなんですか?」


 NPCと呼ばれるゲーム上にしか存在しないキャラクター、つまり人間ではない存在なのだと首をかしげるミティを見ると本人は理解していないのだと分かる。

 シキはミティがNPCの存在を理解していないのであれば、その内容を掘り下げるのはどうかと思い会話を別の方向へと持って行く。


「いや、なんでもない。それよりも《汚水洞》に急ごう。マティが心配だ」


「はい」


 《汚水洞》に向かっている最中もモンスターとエンカウント(遭遇)するがシキの読み通りミティはモンスター一体倒すのにも苦戦していたので、バトル時の作戦と称してミティのシーフのスキルも加味しつつシキの援護やサポートをメインした攻撃をしてもらうことにする。

 シーフのスキルは【速度上昇スピードアップ】、通常攻撃より高い攻撃で中距離攻撃が可能になる短剣を相手に投げつける【ダガースロー】、ヘイトと呼ばれる敵意のパラメーターを下げることができる【スニーキング】がある。

 基本はシキの後方に位置してシキがモンスターを攻撃し弱らせたところへの追加攻撃。

 シキがモンスターからの攻撃を食らってしまいそうな場合は援護攻撃として【ダガースロー】、自身が攻撃を受けてしまいそうな時は【速度上昇スピードアップ】、HPが減ってしまいこれ以上の攻撃くらうのがまずい時は攻撃を交わしていけるように【スニーキング】を使う戦略が固まる。


「シキさん、すごいです。この形なら私もうまくやっていけそうです」


「よかった。お互いの強みと弱みを生かして何かを成し遂げるっていうはすごくいいことだと俺は思うよ」


「はい」


 決めた戦略に沿ってバトルをしていくとシキとミティの連携によりモンスターを倒すスピードが速くなる。

 活躍どころを見出したミティはバトル毎に自信を持っていけてるようにみえた。


「今更なんだけど、マティはなんで一人で《汚水洞》なんて危険領域のところに行ってしまったんだ?」


「実は・・・」


 ミティはマティが《汚水洞》に一人で行ってしまうまでの経緯を話し始める。

 小さい時の父を亡くしてしまったミティは、妹のマティと母と三人暮らしをしていた。

 モンスターとの戦いで命を落としてしまった父を誇りに思う一娘達の気持ちに反して、危ない目に合わせたくない母はミティやマティに対して戦闘職のジョブをつけることをすごく嫌がっていた。

 しかし父を誇り思うからこそミティとマティはこっそり街の外に出てレベル上げをしてしまっていた。

 少しのダメージでも母を心配させるため、街の人たちのお手伝いをしたりしてお小遣いをためHP回復薬を買っては外に出てバトルをしたり、人が良さそうなパーティーに混ぜてもらって経験値を分けてもらったり、バトル報酬でのお金を得てまたHP回復薬を買ったりを繰り返してレベル上げをしていく。

 結果、二人は基本職を得るとまではできるようになる。


 時同じくして街の近辺にポイズンウーズと呼ばれる毒のスライムが大量に現れた時期があった。

 街の戦闘職を持つジョブの人達が討伐に向かうが、ポイズンウーズの数が多いのもあり全討伐まで至らない。という問題が発生していた。

 急遽、戦闘職のジョブを持っている人員であればと募集要項の制限が緩くなったタイミングでマティが志願して混ざってしまう。


 マティがポインズンウーズ討伐に向かったと知った母は急いで街の外に出てマティを見つけ止めようとするが、父の誇りを思い出してほしいマティは戻ろうとしなかった。

 マティが戻らないのであればと引き下がらないと言い始め無理やりマティについて行ってしまう母。

 母は完全にバトルにおいて足を引っ張る状態になり、マティと母が言い争いをしているところにポイズンウーズの毒牙に母が掛かってしまう。

 ポイズンウーズの群れはというと一定期間を経て街の近辺には現れなくなり巣である《汚水洞》に戻っていった。

 抜本的な問題を解決はできてなかったが、一旦は街に安泰がおとずれる。


 だがポインズウーズの毒牙にかかった母は時間と共にHPを減らされるて寝込むようになり回復薬と共に色々な解毒剤を調合するも効かずミティとマティは途方にくれる。

 そんな中アイテムショップの店長から母を毒牙にかけたポイズンウーズは上級ポイズンウーズの可能性が高い情報を得てしまう。

 解毒するには上級ポイズンウーズ自体を討伐して《ウーズのコア》と呼ばれる素材を手に入れ《ウーズの浄化液》を作ることが必要だという情報をも、まずいことに自責の念に駆られてしまっていたマティの耳に入ってしまい、マティが単身で《汚水洞》に乗り込んでしまったのを知り慌てて追いかけるようにミティも《汚水洞》に向かっていたところシキに助けてもらったのが今のようだった。


「マティはミティと同じくらいのステータスだよな?」


「はい・・・。私はシキさんに助けてもらいながら前に進めていますけど、マティは誰の助けも借りずに一人で向かってしまったので・・・」


 そう言って肩を震わせながら顔が青ざめているミティを見て最悪のことも想定しているのかもれいないと思ったシキは、ミティの頭をポンポンとする。


「大丈夫。マティを見つけて上級ポイズンウーズを倒してお母さんの毒も治そう。こういう時はいいことを考えておかないとダメだ。OK?」


「は、はい、そうですね。お姉ちゃんの私が不安になっていたらダメですよね」

8/13です。

次は22時に投稿します。

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