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3話 ACT2-1

 壮大な草原を駆け巡る飛行とアナウンスを終えた後、何もない暗闇の世界に放り込まれる。サラの姿は見えない。現実の自分はただホロジェクターグラスをしていて幼なじみの部屋で座っているだけなのに、そんな自分の存在はなかったように体感は、その暗闇で立ち尽くしている感覚だけだった。


「それでは、今からキャラメイクに入りましょう」


 AH(アストラルホライズン)は、ファンタジー世界設定となっている。ナビゲーションの案内に合わせて目の前に映し出されたのは、人間か人外かを選ぶアイコン、性別を選ぶアイコン、髪型、目、鼻、口、輪郭、体つきを選ぶアイコンだった。人外のアイコンを押すと獣人、機人、エルフ、オーガ(鬼)等色々並んでいる。これでいかようにも現実の自分とは違う外見の自分が生まれるわけだが、アイコンの中には”そのまま”というボタンもあったので、天邪鬼のシキは現実の自分の姿を投影する”そのまま”を選んだ。


「次にステータスの説明を致します」


 ステータス画面が目の前に現れる。種族、ジョブ、HP(体力)、MP(魔力)、STR(物理攻撃力)、DEX(命中率)、VIT(防御力)、INT(魔法攻撃力)、AGI(俊敏性)から基本構成がされていた。種族はさきほど人間か人外かを選べたが、シキは”そのまま”を選んだので”ヒューマン”と記載されていた。その他のステータスはまだデータ反映されていないのか”--“となっている。


「基本構成とは別に隠れステータスも存在致します。隠れステータスはAH(アストラルホライズン)で過ごす生活の中で発見してみてください」


 隠れステータスを発見する喜びが追求心の高いプレイヤー達には、心響く設定なのかもしれないが、面倒臭がり屋のシキにはもったいぶるなよ、という心のツッコミしかない。


「最後にジョブのご案内をします」


 そしてプレイヤーとしてログインしてきた者は必ず、戦闘職の何かしらのジョブにつかなければならないようだった。基本職として提示されたのは、STR(物理攻撃力)にステータス補正がかかるファイター、DEX(命中率)補正のアーチャー、VIT(防御力)補正のナイト、INT(魔法攻撃力)補正のウィザード、AGI(俊敏性)補正のシーフ。


 ところが案内をされるだけでジョブを選べない。


「おい、これどうやって選ぶんだよ?」


 シキの質問に答えたのは、ナビゲーションではなくサラだった。


「シーちゃん聞こえる?」

「聞こえる聞こえる」


 突然の声に多少びくりとしながら姿が見えないサラと会話するシキ。


「どこまで進んだの?」

「ジョブの説明までだな。ジョブ選べないんだが?」

「そうなの。最初はジョブ選べないの。ノービスって言ってね、初心者職が最初に与えられるジョブになるかな」

「なんだよそれ、だったら別にジョブの説明いらなくねえか?」

「わからないよ、そういう仕様なんだもん。ケチつけてないで早くおいで」


 おいで、という意味が分かったのは、目の前にある”world in”というボタンが光っていたのに気づいてからだった。中途半端な案内なのは、サラの横槍コメントによってナビゲーションの案内が一部スキップされたように思えた。


 ”world in”と宙に浮いているボタンを押すと目の前に広がったのは、中世ヨーロッパのような街並み。街がデザインされている事を意識したような建物の並びと道路で走っている馬車。心なしか空気がやや澄んでいるように感じた。さきほど人外で並んでいたアイコンを選んであろうプレイヤー達が街の通りを歩いていく。


「やっぱり、何も変えてない」


 そして声がするほうに振り返るとやや不満そうなサラ。エルフ種族を連想してしまうような淡い黒のアームウォーマーとニーソブーツとスカート、上半身は無地の白の体のラインがしっかりわかるノースリーブだ。髪型はお団子頭からセミロングになっているだけで、シキと同じく”そのまま”アバターを選択しているように見えた。


「ちなみにこの格好までは俺、選んでないんだが・・・」


 シキは自身の格好を改めてみると外見こそは自分だが、上下緑色の如何にも村人Aがしていそうな服装だった。


「初期で与えられる装備一式はそんなものだよ。本当は外見は変えられるんだけど”そのまま”を選んだから本当にそのままになっちゃったね」


 ふふふと微笑するサラがやや癪にさわるシキは、ステータスの見方を教えてもらう。


 初期で渡された装備一式は、木の杖、村人の服、村人の靴のみ。武器や防具やアクセサリーを設置するスロットと言う場所に武器等を設置できる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

シキ装備スロット


武器   木の杖

盾    なし

頭    なし

体    村人の服

腕    なし

靴    村人の靴

アクセ1  なし

アクセ2  なし

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 スロットに初期で渡された装備を設置し、マイページから確認。武器は常に持っている状態ではなく、バトルモードに入ると具現化させる。防具等はそのままの物をつけていてもいいし、アバター切り替え機能を使えば、全然違う格好もできたりする。つまりピエロみたいな格好してるけど、実はすごい大ナタをふるって攻撃することもできる。 それって戦略的にも使えるんじゃないか、と思ってみたり。


「なあ、AH(アストラルホライズン)ってなりたい自分になれるんじゃねえの?俺、全然村人になりたくないんですけど。下手したらリアルの時よりモブだぜ」


 自分の身なりをみて明らかに不満そうなシキみて、ニコニコしてるサラ。


「まあまあ、落ち着いたらアバター切り替えしましょう。まずはレベル上げしようしよう。チュートリアルは私も一緒だしスキップしちゃおう。見た目はアバター切り替えでなりたい自分になれる。レベル上げもがんばればすぐにあがっていく。なんの努力もしないでサクサク物事が進むのもつまらないし、でもすごい大変だと現実世界と変わらないし、AH(アストラルホライズン)は、そのバランスをうまく保てていると思うの。絶対、現実世界と違うのはここはプレイヤーがなりたい自分にがんばった分だけ必ずなれる世界だから、きっとAH(アストラルホライズン)の運営は、この世界を通じて、理想の自分を叶えていく経験を踏んでほしいんじゃないか、って私は思っている」


 どう、すごいでしょ?と人差し指をピンと立てて同意を求めてくるサラにシキも少しだけノリを合わせていく。楽しそうなサラを見るのは悪くない。


「ああ、しかしサラ、完全に運営側コメントだな」


 シキが興味を示す反応にサラはご満悦だ。よかった、と言わんばかりで、パッとさらに明るい笑顔になる。シキとしては、自分の賛美がここまで微笑ましい笑顔を生み出せるのもなんだかむず痒い。


「えへへ。やっぱり現実世界よりAH(アストラルホライズン)の世界のほうがみんな楽しそうだもん。何もしないで過ごしている人もいるけど、全然構わないし、人なんていつ、どのタイミングでやる気になるか、わからないでしょ?徹底的に何もしないというのを経験したあとに、徹底的に何かしたくなるかもしれないし。そういった人の気持ちにすごく寛容な世界だと思う。シキにもこの世界を見て欲しかったんだ」


 笑顔で自身の考えを恥ずかしげもなく教えてくれるサラ。

 

 本当こいつ、言うこと言うこと、神嫁発言だよな。


 続いて、自分のステータスを公開するのは相手に攻略法を教えるようなもので、基本は見せることはないらしく見せるには信頼関係が大事だということをシキはサラに教えてもらった上で装備一式を見せてもらう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

サラ装備スロット


武器   風精の長弓

盾    なし

頭    ベレーキャップ

体    風精の軽鎧

腕    熟練狩人のアームウォーマー

靴    熟練狩人のニーソブーツ

アクセ1  シルフスカーフ

アクセ2  遠見の眼鏡

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 とはいえ、サラが装備しているものがいいものなのか悪いものなのか、そもそも見たところで攻略法もわからないシキ。ステータスのスロットに記載されいている武具やアクセとサラの格好を見てみるとやや違っていた。


「次は、ステータスの説明をしていくね」


 サラの説明は続く。

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