第七話
「……お前、玉藻組でどんな生活してきた」
「え? 普通に部屋に居たけど……」
何がなんだか分かっていないといった顔をする玉藻。
「他には」
「何も」
__は……?
「武術は」
「できないわよ」
「武器は」
「持ってないわ」
「勉強は」
「してなかった」
「……それは、自分の意志でやらなかッたのか」
「違うけど?」
俺は無言で立ち上がる。
「待て。気持ちは分かるがまずは落ち着け」
「……あァ」
座り直す。
玉藻を見ると、首を傾げていた。
それを見て更に玉藻組への殺意がわき上がってくる。
その殺意を押し殺し、質問を続ける。
「部屋からは出なかったのか」
「出ては駄目って言われてたからね」
「いつからだ」
「産まれたときから」
もう一度無言で立つ。
「落ち着け」
「……そういう爺様だッて、殺気抑えられてねェぞ」
「ふんっ。……玉藻組の姫、否、葛葉嬢よ。何故、そのような扱いをされていたか、分かるか?」
爺様の言葉を聞き、考え込む玉藻。
「『お前は、忌み子だ』」
「「「ッ!?」」」
「『お前の力は強すぎる。我々の手には追えない』……そう言って、これをつけられました」
そう言って見せてきたのはピアス。
「触ッても良いか?」
頷いたのを見て、ピアスに触れる。
__!
途端、視界が真っ暗に。
__引きずり込まれた、か。
「随分と強力な奴なんだな」
「小僧」
「あ?」
振り向く。
そこには、杭で九本の尾を貫かれ、鎖が体に巻き付いた藍白の九尾狐が居た。
「何をしにきた」
「手前が引きずり込ンだンじゃねェのか?」
「知らぬ」
__話が噛み合わねェ。
「俺は玉藻葛葉のピアスに触れただけだ」
「ほう? 触れただけで此処に来れたのか」
「此処は何処だ」
そう聞くと、少し首を傾げた後、「分からぬ」と言った。
「妾は精神世界と呼んで居るがの」
「精神世界か。ンじゃ、此処は玉藻葛葉の中ッてわけだ」
「ご名答。流石は先祖返り」
「先祖返り」。
その言葉を聞いた途端、俺から大量の殺気が漏れ出る。
「何故それを知っている。爺様も知らない事だぞ」
「ふんっ。同胞の気配位分かるわ阿呆」
『主様、私も出たいですわ』
頭に声が響く。
__あ?
__ッたく。
「『来い、吸血姫』」
そう呼べば、俺から幽体離脱するように出てくるそれ。
それは吸血鬼。
産まれたときからの付き合いだ。
俺に憑依していて、簡単に言ってしまうと俺はコイツの先祖返り。