第三十九話
「お止め下さい!」
__あ?
声がした方を見る。
其処には、貫頭衣を着て大杖を持った娘が居た。
「おぉ、聖女殿。どうかなされましたかな?」
さっきとは打って変わって下手に出る偉そうな神官。
『雪紫、聖女って?』
__それも知らねェのか……。
『倭国で言う巫女だ。主に、神から信託を授かったり、神官を纏める役割がある』
『へー。じゃあ凄い人なんだ』
『まァ、そうかもな』
念話を切り、俺を見つめる聖女様を見つめ返す。
「私は、このヴァルルにある大神殿で聖女を勤めて居ります。宜しくお願い致します。倭国の者達よ」
そう言いながら頭を下げる聖女様。
「これは御丁寧にどうも」
こっちも下げ返す。
「それで、何を揉めていたのです? 神龍、という言葉が聞こえましたが」
「この魔族が神龍が居る、そこのモンスターが神龍だと言っているのです。神龍など、今はお伽話にしか存在しないというのに」
ルチアを指差す偉そうな神官。
「その方が、神龍……? 確かに、神々しいオーラを纏っていますね。……変化を、解いてもらう事はできますか?」
__ふむ。
「ルチア、どうだ?」
「其れがユキシの為ならば」
「おう。ンじャ、離れてくれ」
周りの神官に言うが、誰一人として動かない。
「……はァ。手前等の為に言ッているンだがな。警告したからな? 気絶しても、俺達の責任じャねェぞ」
言い終わると同時に、ルチアが変化を解く。
眩い光を放ち、龍の姿になっていった。
「これは……!」
完全に龍の姿になると同時に、威圧が放たれ、神官がばたばたと倒れて行く。
偉そうな神官は気絶はしなかったものの、尻餅をついて後退る。
「先程見たのは、夢ではなかったのですね……」
聖女様が跪く。
「あぁ、貴方は正しく神龍! お会い出来て、光栄です」
『そう畏まらないでくれ。我はつい先程までは邪龍だったのだから』
「邪龍から、神龍に……? だ、誰が、浄化したのですか?!」
『我が主だ』
聖女様の視線が俺に向く。
「貴方、ですね?」
「何故だ?」
「保有している魔力の量が桁違いです。しかも、適正が全属性ですよね?」
__へェ……。
「眼が、良いみてェだな」
「ッ! ……えぇ。まぁ」
『どういうこと?』
念話で白雪が聞いて来る。
『聖女様の眼。ありャ魔眼だ。大方、相手の魔力が見えるンだろうよ』
『凄いのね』
『聖女になる奴は何かしらの能力を持ッてなきャなンねェからな』
聖女様が口を開く。
「司祭殿。この方々は人間です」
「で、ですが……」
__コイツ、司祭だッたのか。
「この方々は人間です。魔族の持つ禍々しい魔力はありませんから」
「……はい」
神官達を撤収させ、俺を睨んでから去る司祭。
「ご無礼をお許し下さい」
「あァ」
「ありがとうございます。改めて、ヴァルルへようこそ。歓迎致します。そして、貴方方の行く先に神のご加護があらんことを」
一礼し、去って行く聖女様。




