第六話
玉藻組。
大昔、山城を中心に暴れていたとされる九尾狐の血を受け継いだ一族が代々継いでいる組。
九尾狐の血は強力で、飲むと不老不死になれるという話もある。その為、様々な者達がその一族を襲った。
当時、玉藻組は極道ではなく、普通の一家だったが、自分達の身を守る為、身内だけの極道を作った。
それが、玉藻組だ。
__しかし、玉藻組は外との干渉を極端に嫌がり、山奥で暮らしているという話だが……。
「アンタ達、何者なの?」
「……俺は藜組五十代目若大将、藜雪紫だ」
「私は古清水組の姫、古清水白雪よ」
首を傾げる玉藻。
それを無視し、問う。
「何故玉藻組の姫が外を出歩いている」
「そっ、それは……」
口籠もる玉藻。
「……まァ、無理には聞きださねェよ。とりあえず、藜組に連れて行く。これ羽織ってろ」
そう言って羽織りを渡す。
「う、うん……。ありがと」
「……行くぞ」
玉藻を横抱き(所謂お姫様抱っこ)し、屋根に飛び乗る。そして玉藻を気遣ってある程度の速度を保ちながら藜組へ向かう。
数分走ると、山の麓に着く。
そこから山を登ると、中腹辺りに二軒の大きな屋敷が現れる。
「ここが、藜組と古清水組の本拠地……?」
「えぇ。そうよ」
門に近づくと、藜組の構成員が俺達に気づく。
「お帰りなさいやせ!」
「あァ」
返事をし、中に入る。
「邪魔するわ」
「お、お邪魔します……」
白雪と玉藻も続く。
応接間に玉藻を連れて行く。
「此処で待っていろ」
玉藻が頷いたのを見て、その部屋を後にする。
近くに居た女中に茶を持って行くよう言い、爺様の所へ行く。
「雪紫、入ります」
「白雪です。入ります」
二人で断りを入れてから入る。
「「只今帰りました」」
「あぁ。お帰り。……して、客人は何者だった」
「玉藻組の姫だッたぜ」
片眉を少し上げる爺様。
「ほう。だから妖気が……。分かった。その姫に会いに行く」
爺様の後ろに着き、応接間へ。
「失礼するぞ。玉藻組の姫よ」
爺様がそう呼び掛けると、中から緊張し、震えた返事が聞こえて来た。
入ると、正座で固まっている玉藻の姿が目に入った。
「そんなに緊張せんでも良い」
「は、はい……!」
__いや全然緊張ほぐれてねェだろ。
爺様は玉藻の目の前に座り、俺達はその後ろに座る。
「……良かったらで良いのだが、外に居た理由を教えて欲しい」
「…………。家出、です」
__家出?
「……正確には、追い出されました」
「追い出された? 玉藻組からか?」
小さく頷く玉藻。
爺様が俺を見る。
それに首を横に振り、嘘は吐いていないと伝える。
「……それはいつの話だ」
「三月程前です」
__約三月前というと……。
「封印の儀式があったな」
頷く。
「封印?」
「知らねェのか? 九尾狐の力を封印すンだよ」
そう言っても、思い当たる節が無いのか、首を傾げたままだ。
「九尾狐、とは……?」
玉藻を抜いた全員が驚く。