第一話
「行って参ります。お爺様、お婆様」
烏羽色の短髪を揺らし、翁に向かって一礼する。
__僕は藜雪紫。15歳。
__あぁ、今は“莱”雪紫だよ。
__僕等極道の人間は、表社会には居ては駄目。
__でも高校までは通わないと駄目っていう家訓があるから、こうして偽りの名、偽りの姿、偽りの性格の別人に成りきって表社会に出るんだ。
「嗚呼。行って来い。絶対に正体を見破られてはならぬぞ」
長い白髪を高い位置で結い上げているお爺様が僕に忠告をする。
__この方は藜組四十八代目大将、藜銀蔵。68歳。
__今はこんなおじいちゃんだけど、昔は“藜の銀狼”って呼ばれてて、とっても強かったんだって!
__戦ってみたかったなぁ……。ま、今でも十分強いんだけどね。
「まぁ、そんな気負わずに、ね?」
平安時代の女の人みたいな長い髪のお婆様が僕の頭を撫でる。
__この方は藜組四十八代目大将が妻、藜紅葉。65歳。
__元は一般人だったけど、お爺様に一目惚れして猛アタック。晴れて夫婦になったんだって。
__あ、お婆様も強かったんだよ。“藜の紅葉”って呼ばれてたんだって。
__僕が薙刀を使うようになったのは、お婆様に影響されたからだからね!
「はい。お爺様、お婆様」
そう返事をして玄関を出る。
すると、僕が通る道を囲む藜組の構成員達が居た。
「「「「「いってらっしゃいやせ! 若!」」」」」
近所迷惑なんじゃないかって位大声で叫んでくる構成員の皆。
__まあ、ここは山奥だからご近所さんは隣の古清水組しかないんだけど。
「うん。行ってくる。留守は任せたよ」
そう言って門を潜る。
そして、隣の古清水組へ行く。
「おはようございます。白雪居ます?」
「おはようございやす! 姫はもうすぐ出てきやす」
「そう。じゃあ此処で待ってるよ」
少し待つと、黒髪を靡かせた少女が出て来た。
「おはよう」
「おはようございます。待たせてしまいましたか?」
この物腰軟らかそうなのが古清水白雪。改め、小清水白雪。
__僕等二人とも、名字の漢字を変えただけ。
__あまり凝っても、反応できなかったりとかしたら怪しまれるからね。
「ううん。待ってないよ。行こうか」
「はい!」
花が咲くように微笑む白雪。
「どうしたの? なんかご機嫌だね」
「また雪紫と登校できて、嬉しいのです」
「僕も嬉しいよ」
そう言うと、一段と笑みを深くする白雪。
__可愛いなぁ。
そんなこんなでもうすぐ学校。
僕等が通う学校は“鬼龍高校”だ。
なんでも大昔、此処に鬼龍を封印したからだそう。
まぁ、今でも封印されてるなんてことは無いだろう。
__え? フラグだって? シラナイシラナイ。
「というか……。はぁ」
__周りの視線がうざい。
「あぁ、確かに。でも、仕方ないですよ。雪紫が格好良いのですから!」
「いやいや、白雪が綺麗だからでしょ」
こんな感じで、一話千文字程度で書いて行きます。
よろしくお願い致します!