幼馴染編 ②
「やったわ礼二! 同じクラスよ!」
「本当に? よかったー」
一緒のクラスになって安堵するが、やはりという気持ちが強い。
これも主人公の運命力のおかげだろう。
「席に着けよ~ 」
のんびりとした声とともに教室に入ってきたのは長身痩躯に白衣を着た成人男性。
彼の名前は長谷川巧、物理の教師であまり生徒にうるさくいわないので人気がある。
「あー、知っていると思うが担任になった長谷川巧だ。 一年間よろしくな」
そんな当たり障りのない自己紹介をしたあと、こんどは生徒が順番に自己紹介をしていく。
皆が無難にこなしていく中で、極端に緊張しているのが一人
「わ、私の名前は大谷栞です。 す、好きなことは、ど、読書です…… 」
内容はいたって普通なものだが、ここまで緊張していれば皆の注目を集めてしまう。
クラスの視線が彼女に集中した。
腰まで届くかどうかという濡羽色の髪の毛、前髪は眉の辺りで一直線に切り揃えられている。
黒い髪の毛とは対称に肌は雪のように白く日本人形を彷彿とさせる。
うつむいているせいかはたまたおどおどとした口調がそうさせるのか
少し暗い印象をうけるがかなりの美人だ。
注目されるのが恥ずかしいのか皆の視線に気づくと白い頬を真っ赤に染め、急いで着席した。
彼女の整った容姿を褒める声がちらほらと聞こえてくる。
それがまた居心地を悪くしているのだろう。彼女は顔を赤くして俯いたまま微動だにしなくなった。
「あー、続きを頼む」
教師のフォローで自己紹介が再開し、役員決めなどの雑務など
新年度の一日目らしく過ぎていった。