男side(主人公)
短編です。それぞれ、名前は...ない!
初恋の人と結婚する確率、“100人に1人”。と、いつかのテレビで言っていた。
俺の初恋。それは俺にとって、とても甘く苦く、まるで、ココアパウダーをまぶしたチョコが舌に溶けていくような、そんな味だった。
俺には幼馴染みがいた。
静かで感情を面に出さない奴だけど、実は優しいってことは、俺が一番よく知っていた。小さい頃から、ずっと一緒だったから。
俺は君に恋をしていた。いつからかは覚えてないが、自然とゆっくりと恋に落ちた。
高校2年生の時。
周りの友達も応援ムードになっていた。俺は花火大会の時に告白する予定だった。
だけど、そんな俺の目論見は見事にあの日、打ち砕かれた。
「私ね。好きな人ができたの。」
君のこの一言で。
その時はショックを受けたなんてレベルじゃないほど、頭の中は混乱していた。彼女の言葉が何度も俺の頭の中を反響していたのを今でも覚えている。
君の“好きな人”は転校生。頭が良く、スポーツもでき、何より優しい人だと君は言った。
俺は君からその彼の連絡先をもらい、その彼にあるメールを送った。それが今でも忘れられない。
『突然ですみません。俺はあなたの隣の席の女子の幼馴染みです。言っておきたいことがあり、メールを送ります。彼女と仲良くするのはやめてください。』
俺はそう送った。彼女を誰にも渡したくない。その一心で。
メールの返信は次の日の朝、返ってきた。
『あなたのことは、いつも彼女から聞いています。とても仲が良さそうで、羨ましいです。
でも、彼女を好きになったのは俺も一緒です。ちゃんと本気です。彼女の気持ちは分からないけど、彼女を好きでいることは許して下さい。』
俺はそのメールに今でも返信していない。
理由は、悔しかったからだ。そのメールを見た時、“こいつには敵わない。”そう思った自分がいたから。
それから少しして、花火大会が来た。俺と彼女は小さい頃から、この花火大会に一緒に来るのが恒例行事だった。
花火大会当日。その日は俺も君も浴衣だった。俺の浴衣姿に君は「かっこいいね。」とひとこと言ってくれた。ほんとに嬉しかった。
それだけで胸が苦しくなった。
2人で屋台をまわり、花火が打ち上がる時間になった。俺たちは昔から知っている穴場に向かった。2人きりで見れる場所に。
もちろん回りに人はいなかった。彼女はベンチに座り、花火が上がるのを待っていた。
“好き。”その気持ちを伝えるのは、今しかないと思った。
「好きだ。」
うるさく鳴る心臓の音を抑えながら、俺は君に気持ちを伝えた。
君は少しの間をあけてから、言った。
「...ごめん。私、好きな人がいるの。」
と。知っていたことだが、思ってたより、ずっとショックは大きかった。
「うん。知ってる。ずっと。だから、最後にキスしてほしい。」
俺は精一杯に声を振り絞って言った。自分の気持ちに、このキスでけじめをつけるために。
「そしたらもう、幼馴染みを終わりにするから。この関係をリセットするから。普通の同級生に、戻るから。連絡も取らない。お互いの家にも行かない。休日も、2人きりなんかで出掛けない。...だから、お願い。俺の初恋。終わらせてよ。」
それは、俺の中での覚悟だった。
彼女は少しの間をあけてから、「目つぶって。」そう言った。そして、花火が上がるとともに、俺にキスをした。
俺は流れる涙をそのままにして、彼女に伝えた。
「好きだよ。好きだった。大好きだった。...もう、好きじゃない。俺に初恋をくれてありがとう。今までありがとう。さよなら。」
「私も気持ち伝えてくれて嬉しかったよ。ありがとう。さよなら。」
そう言った彼女は、目に涙を浮かべて笑ってた。後ろに咲いていた打ち上げ花火よりもその笑顔は輝いていた。鮮やかだった。
彼女は俺に背を向け、歩いていった。
俺はただただ、彼女の後ろ姿を見送った。
夜空に咲く花火の音は、俺の心に響き渡った。
これが、君と俺の最後の花火大会だった。
大好きだったよ。ありがとう。
さよなら初恋。 今もまだ君の幸せを願ってる。そして、 多分、これが
俺の初恋の終り方。
彼女から見た視点のstoryと、after storyも検討中です。