わたし、ごえんがありまして。(1話完結)
「あの、あなたのごえんいただけますか?」
神社にて、不思議な少女と出会う。
5円ですか、いいですよ。
「はい、ありがとうございます。」
「それでは、今から探しに行きましょう。」
・・・ん?何が起こった??
あの、どこいくんですか?
「はい、今から探しに行きましょう。ごえんを。」
なんとも言えない冷静な口調で語られたので
自分が今、正しい状況とは何かを問いかけはじめた。
なぜだかわからないけど、問いかけながらも少女についていってしまっている自分がいる。
やばい、これでおまわりさんこの人ですなんて言われたら人生終わるかも。
でも、声かけてきたのは向こうだし・・・。
「はい、それではどうぞ。」
何をです?
「出会いを探してください。」
どういうことです?
「あなたはごえんを使うことになったのです」
なんだか日本語がおかしくなってるような。
「素敵なごえんに巡り会えるように、私は応援するのです。」
あーなるほど。って、納得してる場合じゃない!
僕はごえんを探すつもりはないんですが。
「探すことは運命なのです。前向きに諦めてください。」
ええぇぇ・・・。
「あなたはどんなごえんがいいのですか?」
うーん、あまり考えたことないですけど優しい人がいいかなあ。
「それだけじゃ選べないですよ。もっと頑張ってください。」
考えることを頑張るんですか。えっと、僕は人見知りだから
元気で前向きで、自分を引っ張ってくれるような人がいいかなあ。
「煮え切らない感じですが、まあいいと思います。」
「じゃあ、ここを行き交う人で好みの方を選んでください。」
あれ、さっきまで聞いてた内容無視してませんか?
容姿では人を選べないと思います。
「わかります。でも顔は全く見ないなんてないですよね?」
まあ確かに全く気にしないといったら嘘になりますが。
「あなたは胸に目がいっています」
すいません、ちゃんと顔見て探します!
あ、この人いいかも。
「髪は短めで、顔立ちのしっかりしてる人がいいんですね。」
「しかし、女子高生を選んでしまうとは。」
すいません、ついつい可愛いと思ってしまって。
「まあ元気な人という点では、ブレてないとは思います。」
だんだん自分が犯罪者のように思えてくる。
「みじめにならないでください」
「今日はお疲れ様です。来週また神社に来てください。」
よかった。結局のところ何もなくて。
内心いろいろ期待はしていたけど、基本的に干渉しない主義の自分にとって
安心感の方がいっぱいだった。
しかし、あの少女は一体なんだったのだろう。
1週間の間、気になりながらも、ちゃんと神社に行こうとは思わなかったけど
やっぱり、あの少女に悪いことした感がぬぐえないので
意を決して、神社に向かうことにした。
神社にいくと、あの少女・・・ではなく
ちょっと大人びた大学生くらいの女性がたたずんていた。
声をかけようか迷ったけど、あの少女の気配を感じないのでかけてみた。
あの、どうかされたんですか?
「あ、はい。なんとなくここに来たくなったんです。」
ここは紅葉も綺麗ですし、いい場所ですよね。
「そうですね。すごく落ち着きます。」
2人だけしかいない神社、時間が経っても誰もこない。
途中、特に彼女に声をかけることはなかったが、だんだんと物理的にも
精神的にも距離が近くなってきた気がする。
もう暗くなってきましたし、危ないですから駅までお見送りしましょうか。
「ありがとうございます。お言葉に甘えて。」
駅までの道も、そんなに会話はなかったけど
また神社に来たいなんて話をしながら、流れで番号の交換をした。
家に帰ったあと、今日出会った彼女のことを思い出してみる。
髪は短め、ちょっとたどたどしいけど明るい感じの人だった。
・・・なんかいいかも。
そう気持ちが傾くと、だんだんと彼女に会いたい気持ちが強くなってくる。
緊張しながらも、彼女に連絡をとって
また、神社で会うことを約束した。
だんだんと約束の頻度も高くなり、電話での会話も多くなった。
お互い感覚的にも、デートしてるという気持ちになってきた。
後日、さりげなく告白したことを彼女が受け入れてくれて
恋人として、神社以外のところにも遊びにいくことがほとんどになった。
彼女と出会ってから2年、彼女は大学の仲間と卒業旅行と題して海外へいったため
しばらくの間、会えなくなってしまった。
そんな時、ふと思い出したかのように神社に1人で向かった。
「お久しぶりです。ごえんは順調ですか?」
最初に出会った少女だった。
忘れてたことを認めたくはなかった。どうして少女のことを忘れていたのだろう。
「聞かなくてもわかります。あなたは幸せそうです。」
おかげさまで、彼女ができてうまくいってます。
そういえば、どうして2年前の約束の時神社にいなかったんですか?
「来てくださいと言ったのは、あなたにとってごえんな人がいたからです。」
つまり、彼女のこと?
「そうです、あなたは自分の力で1人の女性を彼女にできるまでになりました。」
「大変立派なことです。」
あはは、恐縮ですありがとうございます。
結果的にいい人に巡り会えたので、少女の1週間の経緯について問うことはやめた。
ただ、1つ聞いておきたいことがあった。
どうして、僕に声をかけたのですか?
「あなたなら、きっとごえんを作れると思ったのです。」
少女の前向きな言葉にただただ、感謝の気持ちが絶えない。
「それでは、そのごえんを大切にしてください。」
「私は、これで失礼します。」
そういって、境内の奥へ消えていった。
僕は神社に一礼して、その場を後にした。
その後、何度か神社に1人で来たが少女に出会うことはなかった。
今、僕は社会人になった彼女と婚約をした。
この先、子どもを作るとか色々大変なことが待ってるけど
きっと大丈夫。根拠はないけど自信がある。
あの少女のことは、たまに夢の中に出てくるけど
その度に、新たなごえんのために頑張ってる姿が映っていた。
「あなたのごえん、いただけますか?」
「きっといいごえんにしてみせます!」
思いついたネタを、新鮮なうちに書き上げたいと思い
なるべく短く、短時間で書ける内容にしました。
実際に一晩でかけまして、どうしても日にちをまたぐと設定がブレやすくなる問題がある程度解決できて個人的に満足です。