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泣いた悪猿86
「しかし、なぜ教える?首俵はお前たちにとって、重要な奴のはず。わざわざ敵に居所を教えるとは……」
死神から見れば、これは罠だとも取れた。
「ゲフッ……確かに……首俵さんを……ガプッ……尊敬してっが……あんたもおなグッ……同じだからさ……」
もはや、永山にとって死神は恩人だった。人間として生きる機会をくれた恩人だった。
「第一……あの方はあいたガッ……会いたがってたぜ……あんたにな……」
首俵とはそういう男だ。かつて殺したはずの男が復讐鬼となって命を狙う。人間なら恐怖でしかないが、戦闘狂の首俵はご褒美だと感じているのだ。
恩人に報い、尊敬する相手に贈り物を授ける。永山が二人に遺せる形見として、これ以上の情報はなかったのだ。
「あと……よ。厚かましいっちゃ……ゲプォッッ!……だが……ユウコ……を……」
嗚呼
なんという図々しい頼みだろうか。永山は自分のことながら、そう思った。
ある日突然、恋人が消失する。ユウコからしたら、なんという理不尽だろうか。なんという不幸だろうか。全ては永山の身勝手で起きたことなのだ。




