泣いた悪猿84
死神の右腕が
手首から先が
溶けたように変化した
伸ばされた五本指が
一本の棒に変わり
長く細く伸ばされて
一本の槍と化す
ああ
こいつは
やはり人ならぬものだったのだ
人ならぬものにされたのだ
犯人はオレたちだ
人と生まれながら
人ならぬものとして生きていく
それより他に生き長らえる
方法がなかったのだろう
永山たちが殺した少年は
永山たちを殺す死神に
永山たちが変えたのだ
なんという罪深さ
なんという業深さ
人の子を人ならぬものに
変えた永山たちの罪は
死神によって贖われるのだ
死神の槍は
永山の薄い胸板を貫き
永山の体内で
槍から鉤爪に変形し
ほんの一瞬のうちに
内臓を切り裂いた
剛性と柔性
矛盾する二つを備えた
邪鬼退治にこれほどに
向いた武器もそうはない
果たしてあの方が勝てるのか
死を直感した永山は
自分とは関係ないことが
今和の際で気になった
「……バカめっ……」
永山を貫いた直後、死神は仇の体を抱きかかえた。かつて自分を殺した敵だというのに、まるで友を抱くように暖かい手だった。
「バカめっ!勝てるとでも思ったのか!?」
死神の怒りは見当が外れていた。勝てるなどと思うはずがない。が、永山は所詮は獣なのだ。勝てぬと頭でわかっていながら、食欲に負けたのだ。




