泣いた悪猿82
「結局……さ。わかんなかったな。あんたが何者なのか。何なんだあんた?今気付いたんだけどさ。チョイとだけ、人間の臭いがするじゃねえかあんた。
オレにはよ、あんたの、ほんのチョイとの人間の臭いが美味そうでもう堪んねえくれえなんだわ。情けねえだろ?もう、人間でさえありゃ何でもOKってレベルなんだわ。生っちょろいこと言ってっと、今にあんたにかぶりつくぜ?
どうよ?おっかねえだろ?キメえだろ?サクッと殺っちまいてえだろ?頼む、頼む、ユウコを……あいつをこれ以上悲しませるようなこと、オレにさせないでくれ、頼む……」
永山は懇願した。ほんの半年前には命乞いをした同じ相手に、今度は命を断つよう頼んでいた。
「……いいか。お前には、万が一だが助かる方法がある。お前がよからぬ衝動にかられているのは、呪のせいだ。解呪すれば、瘴気は消え嘘のように元通りに戻るはずだ。だが俺にその呪は使えん。出来る奴の所まで引っ張ってやるから、それまで辛抱しろ」
死神は呆れ果てるほど甘っちょろい言葉を並べた。こんな調子で退魔師が勤まるわけがない、生クリームパフェのように甘過ぎる理屈だった。




