表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/88

泣いた悪猿81

まだ昼間だというのに、寂れた街は夜のように暗かった。春だというのに締め付けるように寒かった。それが餓鬼界に堕ちた自分自身から流れる瘴気のせいであることを、永山は理解していた。おそらく彼は街で最も危険な邪鬼と化している。今すぐ滅しなければ、いつ大量殺戮をしでかすかわからない。

ユウコの笑顔が脳裏にちらついた。彼女が老いゆくまで一緒にいたかった。まだまだ何年も幸福に浸かっていられると思っていたのに。それはあまりに身の程知らずな夢物語だった。薄刃の上を渡るような、いつ終焉を迎えるかわからない儚く脆い生活だったのだ。


「……ふざけるなっ!」

死神の反応は、意外にも怒りだった。死神にとって仇であるはずの永山を手に掛けるのは、むしろ喜ばしいものだと踏んでいた。が、怒った理由も理解できた。死神は永山と似ているのだ。邪鬼の肉体を持ちながら人として生きることを選んだのだ。

死神が永山を見逃したのは、面識すらないユウコを不幸にすることが気が咎めたからだと思っていた。が、実のところは他にも原因があったようだ。人ならぬ身でありながら人として生きようとしている永山に、自分自身を重ねていたのだろう。だから、殺すのに躊躇したのだろう。

そして、だからこそ人として生きることを断念しようとしている永山が許せないのだろう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ