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泣いた悪猿78

ユウコは喰いたくない!

彼女だけは喰いたくない!


ユウコを喰いたい!!

彼女を喰えるなら、こんな世界などどうなってもいい!!


完全に矛盾する二つの願望が、永山の心を支配していた。


目の前にいくらでもいる人間どもを、適当に見繕って餌にすれば治まるのだろうか?ほんの三十分前の餓鬼界に落とされるより前まで戻り、餌にされた人間のことなど知らんぷりを決め込んだまま生活できるのだろうか?

ユウコを喰いたくて堪らない今の欲望など、喉元過ぎて熱さを忘れて日常に帰れるのだろうか?


おそらくだが、そんなことはない。

仮に誰かしら人間を喰うことで、永山の飢餓感が消えたとしよう。その代償に、あの死神を始めとする退魔師たちが永山を狙うだろう。そして狙われたが最期、死神の右手の鎌から永山が逃げおおせる手段は皆無だ。

もしかしたらたった一度だけ人間を喰えば、また一年くらい我慢が出来るのかもしれない。だとすれば永山の元に死神が現れる危険はだいぶ下がる。……とはいえ、今の永山には根本的な問題があった。人間狩りに必要な準備を全くせずに外に出てしまった。返り血を隠蔽するための着替えすら用意していないのだ。

首尾良く人気のないところで食事を済ませたとして、帰宅するまで血まみれの姿のまま繁華街と住宅街を何分も歩かなければならないのだ。ユウコの眼を誤魔化す心配をする以前に、通報され警察に咎められずに帰宅することが出来れば奇跡だ。


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