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泣いた悪猿73
だが、映画の展開は永山とユウコの希望から徐々に外れていった。
彼の星には地球と決定的に違う習慣があった。男女が番いになり子孫を残すまでは同じなのだが、妊娠した女性を喰らい胎児を腹に収めた男が出産するという恐ろしい習性を持っていたのだ。食糧に乏しい環境にいた彼らは、女性を養分にして着実に子孫を残していったわけだ。
だが地球に来てパートナーを“愛する”ことを覚えた男は苦悩する。
地球に来る前、配偶者に決めた女性を喰うことは当然のことだった。男性はそのことについて何ら罪悪感を抱くことはないし、女性もステキな男性に喰われて最期を迎えることが幸せだと考える、それが常識だった。
だが男は地球での生活に馴染むうち、彼女を失いたくないと考えるようになった。ましてや喰い殺すなどとんでもないことだと思った。
だが、頭でそう思っていても
先祖代々染み付いた本能には関係がない。
彼女を愛すれば愛するほど
愛おしければ愛おしいほど
彼女を喰いたいという欲望は
抑えがたく狂おしく
男を苛むのだった。
ついに
飢餓感に耐えられなくなった男は
男の子供をその身に宿し
幸福の中で眠る彼女を
流れる大粒の涙をソースに
ボリボリ音を立てて喰い貪った




