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泣いた悪猿72
それは、ほんの些細な出来事から始まった。
ユウコが友達から一本の洋画DVDを借りてきた。
中身は何のことはない、また凡庸なメロドラマだった。
たった一つだけ変わっていたのは、男役が人間に化けた宇宙人だったことだ。
男は地球侵略のための斥候として地に降りたが、一人の女性に出会い恋に落ちる。
文明の進んだ地球は侵略すれば彼の星に大きな利益を齎すことがわかっていた。が、彼は星に虚偽の報告をして星間輸送のコストに見合うか危ぶまれる水準にしかないと言い張った。そうすることによって、コスト計算に時間がかかると嘘をついて地球に滞在できる日を僅かでも延ばそうとした。
以前に見た映画より、永山が共感しやすい内容であったことは言うまでもない。人ならぬ男がすんなりと人間の考え方を習得していくのには合点がいかなかったものの、この男にも自分のように上手くいって幸せになって欲しいと素直に思い入れできた。
懸命に画面に見入る永山を見てクスクス笑うユウコも、また同じような思いだった。人とはちょっと違う恋人に戸惑いつつも惹かれていく様に、自らを重ね合わせていた。




