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泣いた悪猿71
永山は驚嘆した。
首俵の見識の広さには常々から驚かされるばかりだった。が、まさかあの死神のことまで既に耳に入れていたとは、なんという情報の早さだろうか。
「知ってたんっすか?いやいや驚きました。やっぱ首俵さんまじパネェっす。この世に首俵さんが知らねえことなんて、あるんすか?」
あの死神は恐ろしい怪物だ。が、首俵も負けないくらい桁外れだ。きっと首俵なら死神だって倒せるだろうと永山は確信した。
「よせやい。煽てたって何も出ねえぞ。……てめえが望むんだったら、子分にしてやっても良かったんだがな」
最後に皮肉を残して、首俵の金髪頭は夜闇に消えていった。
永山は月を見上げて、しばらく立っていた。
(いい加減、これが最後なんだろうな……)
永山は一度ならず二度までも、いや三度までも、出世のチャンスを逃した。
一年前であったなら、考えられない暴挙だ。が、永山の心に曇りはなく、晴れ晴れとしていた。
永山は邪鬼としての立身出世と引き換えに、人間としてかけがえのないものを手にしていたからだ。ユウコが唐揚げを作って待っている。ただそれだけのことが、世界で一番素晴らしいことだと思えた。
こんな日が永久に続けば良かったのに




