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泣いた悪猿70
離別の直前に、永山は一つ思い出した。
「首俵さん。高谷山にいたとき、小僧を喰ったのを覚えていますか?」
あの死神のことを、首俵に伝えておかなければならない。永山はユウコのお陰で見逃して貰えたが、あの死神を一度殺した仲間の首領である首俵が容赦されるとは思えない。
何より首俵の性格上、見逃して貰える要素を満たす生活変化が望めるとは到底思えない。首俵の体臭に混じった濃い血の臭いが、相変わらず人間を取って喰う食生活を続けていることを知らせていた。
あの死神のことを知らないままでいたら、いくら偉大なる首俵でも命が危ない。
「あ?小僧ったって、てめえ。あんとき何人の小僧を喰ったかなんて、覚えてもいね……」
首俵は闇の中で永山をしばらく見つめた後、ふと思い出したように言葉を翻した。
「……ああ、あの上物か。……へへ……生きてやがったんだ……なあ、あの小僧め。しかもオレたちに仕返ししようとして……るってなあ」




