66/88
泣いた悪猿66
「すると……首俵さんが今日、来たのって……」
永山は悟った。柱神に昇格した首俵が考えそうなことといえば、二つだ。
一つは有能な部下の召集。そこからの飛騨派の殲滅。
つまるところ、首俵は飛騨申兵衛打倒のために永山を呼びに来たと見て間違いないと思った。
「おっとトウジ、一つ勘違いしてねえか?オレは当面、飛騨爺とやりあうつもりはねえ。実はな、あんな老い耄れのことなんざ後回しにするほどの大事が、オレにはあるからさ」
首俵の宣言に、永山は歓喜で震えた。
嗚呼
それは何という甘美な誘いであったろうか。
飛騨派討伐というマシラ一族の大義すら上回る大事など、存在するなど考えもしなかった。ついに時代は動き出すのだ。そして時の動乱に大きく関わるのだろう一大事に必要な戦力として、首俵は永山を必要としてくれているのだ。
追い風どころの話ではない。ある意味で、天命が永山を試していた。もしこれが一年前であったなら、感涙に咽び死ぬまで首俵に仕えることを誓ったろうに。
(どうして、こういうタイミングで来るかね……?)
運命の執拗なまでの悪意に、永山は怒りを通り越して呆れ果てた。




