泣いた悪猿64
ひとしきり挨拶が済んだ後、二匹の邪鬼は近くの公園で喋り始めた。高谷山で別れて以来、色んなことがあった。
「飛騨の爺が、カンパニーを抜けたらしいな」
西地方に拠点を置く首俵にも、報は届いていたらしい。
「そうっす。お陰であのジジイ、仲間の大半から総スカンっすよ。自業自得もいいところだ」
永山はまた例のカフェに連れて行こうかとも考えだが、それはヤメにしておいた。コウタの時ほど寒い季節ではなかったし、何よりコウタと同様の反応をされることを予測したからだ。
永山が変わってしまったことを知ったら、首俵はどう思うだろうか?それだけが少し気懸かりだった。
「飛騨がどうして抜けたか、知ってるか?」
首俵の口元がニュウっと曲がっていた。そういえば、どうして飛騨申兵衛が離反したのか、永山は知らない。
「飛騨には信じられねえビックリなことが、カンパニーで決まったからだ」
首俵のニマニマ笑いから、彼が相当な新情報を持っていることがわかった。が、勿体ぶっている首俵にどう接したら良いのか永山は熟知している。
「ええっ!何かあったんすか首俵さん?」
首俵はマシラにしては桁外れの知力が自慢だ、と永山は考えている。そのあたりを持ち上げてやることは、首俵の機嫌を良くするための基本なのだ。以前から永山はそういうものとして首俵と接してきたし、それが功を奏しているのか、首俵は永山には辛く当たることがあまりなかった。




