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泣いた悪猿58
違う、違う、違う……!
ユウコを両の腕に抱きながら、永山は眩暈がした。
違う。運命という奴は、とんでもなく残虐なのだ。ユウコの言ったことは正解でありながら見当が外れていた。運命は彼女の人生を狂わせた一味である男とくっつけるという、悪意に満ちたシナリオを用意していたのだ。
人の心を持たぬ男を地獄に落とすために、わざわざ人の心のなんたるやを学ぶお膳立てまでした上で。
運命は懇切丁寧に、永山がしでかした罪の重さを教え込んだのだ。
たかが邪鬼一匹にここまで手の込んだ罰を与えるのだから、舌を巻く他はない。
(……たかがオレごとき、地獄にでも何でも落とすがいい!!だが……だが!)
永山は強く強くユウコを抱き締めた。ユウコは痛いとも言わずに、それが永山の愛の強さに比例しているものと勘違いしたまま、力一杯の抱擁を堪能している。
(オレに……オレに彼女を愛する資格もない!だが、この女だけは不幸にさせないぞ!!)
永山は誓った。
ユウコを死ぬまで騙しきることを。
彼女を自分の命よりも大切に想うがゆえに、虚構の恋人を演じきることを誓ったのだ。




