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泣いた悪猿53

永山もユウコも顔をくしゃくしゃにして泣いた。そんなお互いの顔が可笑しくて、今度は二人して笑いが止まらなくなった。


永山には幸せというものがいまいちわからなかったが、多分こういう感覚のことを指すのだろうと、そう思った。


劇終後のスタッフロールと共に、結婚式の後、子を産み育てやがて年老いていく二人の写真が次々と流れた。

「……あたしたちも……いつかは……ねえ……」

そばに寄り添ったユウコが、上目使いで永山を見つめた。いつものおどけた態度が無く、緊張した風に見える。彼女が言わんとしていることが、永山には察することができた。

「やりたいのか?ケッコンシキとかいうやつ?」

永山が他人事のように言葉を漏らすと、ユウコは俯いて首を縦に振った。


永山にはピンと来ないのだが、単に二人で生涯を連れ添うという約束をする儀式は、ユウコには憧れて止まないほど大切なことらしい。そもそもユウコとずっと一緒にいる以外の選択肢など考えてもいない永山からすれば、確認のための儀式に七面倒臭い手間をかける思考が全く理解できない。とあれ、どうしてもユウコがやりたいというのなら、重い腰を上げる覚悟もないでもない。



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