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泣いた悪猿48

このとき、永山はふとあることに気付いた。

あの死神は、ユウコのことを呪か何かで見知っていたわけではない。ユウコのことを何も知らないのに、見も知らない女のために死神は永山を逃したのだ。根拠はないが、何となくそう確信した。考えるまでもない、当然のことのようにそう思った。

ほんの一年前まで何一つ見えていなかったものが、つぶっていた目を見開いたかのように見えていた。マシラとして生きている限り、見ることも感じることもない、それどころか必要性すら全くないものが、それでいて生涯を賭けるに値するほど大切な何かが、今の永山には手に取るようにはっきりと認識できた。


駅の改札で別れた平林に、永山は頭を垂れたきりしばらく動くことができなかった。平林の姿はとうになくなっているのに、終電を過ぎて人気のなくなった駅前でただ一人頭を垂れていた。自分とユウコの幸福が、様々な人々の好意によって支えられていることを痛感していた。コウタ、平林、そしてあの死神さえも。沢山の、本当に沢山の、温情によって守られていることを感じた。


雲に隠された月が僅かに顔を出し、寒空の下でいつまでも頭を垂れている永山を柔らかに照らしていた。



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